切なさを感じる ページ41
「全く…だらしのない奴だ。」
ハクがそう言うと、紫苑はゆっくりと起き上がった。そして、握っていた私の手ぐいっと引き寄せ、私を抱きしめた。
「Aはなぁ、俺のもんだからな。お前にはぜってぇに渡さねぇからなぁ〜。」
真っ赤な顔をして、紫苑は言った。
「ちょっ！何言ってるの！？紫苑！」
「はぁ…。本当にどうしようもない奴だ。」
ハクは、心底呆れたように溜息をついた。彼は湯飲みに水を入れ、戻って来た。
「紫苑、これを飲んで。」
水の入った湯飲みを受け取る紫苑。ハクは、懐から紙に包まれた丸薬を取り出した。
「これは…？」
「酔いが早く覚める薬だ。私も、仕事の都合上客と飲み交わすことが多々あってね。よく効く薬だ。すぐに覚める。」
「ハク、ありがとう。」
ハクはフッと笑った。
紫苑は、不機嫌そうにその薬を飲む。そして、へらへらとした口調のままハクに言う。
「さぁんきゅ〜。ハク様もなかなかいい奴だな〜…。」
「すまないが、ちっとも嬉しくない。」
そう言うハクだったが、少し頬が緩んでいるように見えた。
「私も、しばらくここにいてもいいか？」
そう言いながらハクは私の隣に腰を下ろす。紫苑は、依然として顔を赤らめながら呑気き鼻歌を歌っている。
「うん。」
「ありがとう。」
宴も終盤で、紫苑みたく酔いつぶれる輩も出てきた。お囃子の音は、いつの間にか話し声に変わっていた。
私は、Aの隣に座り壁にもたれかかった。私も、客と酒を飲み交わし始めたときはよく彼のように酔いつぶれたものだ。そのたびに兄役や千尋に迷惑をかけた。あんな情けない姿、Aには見せられないな…。
そんなことを思いながら、私はAをちらりと見た。彼女もお酒が入り、頬がすこし赤らんで、目も少しばかり潤み、妖艶さを引き立てていた。
再会してから、色んな彼女の顔を見た。笑った顔、困った顔、驚いた顔、…今みたいな少し艶やかな顔。今まで知らなかった表情も紫苑は知っているのかと思うと少し悔しく思う。
「A……ヤバい…俺。」
ふと、横で紫苑の弱々しい声が聞こえてくる。酔いがさめたようだ。
「紫苑？」
「吐きそう！」
切羽詰まった声。Aは、慣れているのだろう。紫苑に桶を手渡す。真っ青な顔で桶の中に顔をつっこむ紫苑。心配そうに背中をさするA。
「もう…だから駄目って言ったのに…。」
「わりぃ、わりぃ。……うっ！」
その二人を見て、何故だか切なさがこみ上げてきた。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます！ (2019年1月20日 22時) (
レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ﾆｺｯ あ！ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、！ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます！笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん！？君の手シリーズ読んでました！(｀・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…！ありがとうございます！これからも頑張らせていただきます！ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます！紫苑君、これから結構活躍するはずです！見届けてあげて下さい！よろしくお願いします！(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もなか | 作成日時：2015年11月19日 1時
