再会の音 ページ5
「じゃぁ、一番上の階に集合ね！」
そう言うと、彼は振り返り、おう！と叫んだ。ひさびさの空中散歩にウキウキする彼の背中を見て思わず顔が綻んだ。
寝静まった静かな油屋の中をヒタヒタと歩く。厨房の方ではすでに仕事が始まっているらしくグツグツと鍋が音を立て、せかせかと忙しそうに動き回っている久しぶりの馴染みの顔をこっそりと見る。
長い廊下、華やかな表側の建物とは違う従業員専用の道は歩くたびにギシギシと音を立てた。この音も久々に聞くものだから懐かしく感じてしまう。
帰ってきて良かった。
純粋にそう思う。そよ風で揺れ、カタカタと音を立てる窓硝子でさえも私の、私達の訪問を喜んでいる気がした。
階段を登りに上り、たどり着くのは大きな扉。この扉のさらに奥にこの大きな油屋を取り締まっている湯婆婆様がいる。久しぶりの再会だ。自然と身が引き締まる。
「…そう言えば…紫苑、どこにいるかな？」
私もゆっくりめに来たし、もしかしたら先に行って待っているのかもしれない。
そんな事を考えながら私は湯婆婆様の待つ部屋に足をさらに進める。
分厚いカーテンの向こう。カリカリと書物にペンを走らせる音が聞こえる。
「失礼します。」
緊張しているため、少し声が震える。六年ぶりの湯婆婆様はぜんぜん変わっては居なかった。
大きな頭に乗っかっている白髪の団子、大きな鷲鼻、ギョロリとした大きな目。
全く変わっていなかった。
少しだけ安心感が広がる。湯婆婆様は前みたいなだみ声で言った。
「随分と遅かったじゃないか。」
「申し訳ありません。」
「全く…帰ってこなかったらお前を子豚にでも変えてやろうかと思ったけど。」
冗談になりそうにない湯婆婆様の歓迎の言葉に私は、ははは。と苦笑いで返した。
ふと窓の方に目をやると月が上っていた。下ではもう騒がしくなっているころだろう。相変わらずこの部屋は静寂だ。
その静寂を次に破ったのは、私でも、湯婆婆様でもなかった。
「失礼します。」
綺麗な、凛とした声がした。反射的に横を見る。声だけで、雰囲気だけでわかる。
------------------ハクだ。
彼は、変わっていた。
背が伸びて、目つきは優しく、六年前の彼とは少し感じが違った。
彼と目が合う。反らしてしまいたい衝動に駆られる。けど、固まってしまって私は動けなかった。冷水をいきなり浴びせられた気分だ。
けど、彼の見開かれた大きな深緑の瞳は、あの頃の、私の大好きな瞳のままだった。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます！ (2019年1月20日 22時) (
レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ﾆｺｯ あ！ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、！ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます！笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん！？君の手シリーズ読んでました！(｀・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…！ありがとうございます！これからも頑張らせていただきます！ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます！紫苑君、これから結構活躍するはずです！見届けてあげて下さい！よろしくお願いします！(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もなか | 作成日時：2015年11月19日 1時
