盛り上がる宴 ページ38
確かに、ハクは手先が器用だ。何でもひとりでテキパキと、こなしてしまう。故に、油屋の重役をこなせるのだろう。
私は、ハクの方をチラリと見た。湯女に囲まれながらそこにいる彼は、父役と何やら話し込んでいるようだった。真面目な顔つきからして内容は仕事のようだ。
にしても、ハクが花飾りを作っているところを想像すると心なしか頬が緩む自分が居た。
「Aちゃん!本当に綺麗になったね!」
千尋ちゃんが身を乗り出しながら、目をきらきらさせて言う。リンもうんうん。と頷く。
「そっそんなことないよ。」
千尋ちゃんがなおも口を開く。
「ハクもね、そう言ってたんだよ。」
「え……。」
一瞬、心臓がどくんと動く。
横に座って料理を食べていた紫苑の手も一瞬だけビクッと反応した。
あのハクが怪我をして帰ってきたときのあの彼の口から漏れた言葉がフラッシュバックを起こす。
横でリンが吹き出す。
「え!?まじかよ。彼奴が?いつも眉間にしわ寄せてる奴が?」
「えーっと…何だっけ?…髪の毛が綺麗で、大人っぽくて…みたいなこと言ってたよ。」
「ぎゃはははっ!何だよそれ!」
リンは、腹を抱えて笑い出し、紫苑は不機嫌そうに鼻を鳴らして席を立ち、他のみんなの所に行ってしまった。
「リン、ちょっと笑わないでよ…。」
「だって、あのハク様だぜ?あー、そうそうハクと言えば…」
リンが、ハクに関する面白いエピソードを話し始める。粗相をしたお客を怒ったり、従業員に説教したり色々な話が彼女の口から出てくる。
千尋ちゃんと私はお腹を抱えて笑ったり、驚いたりしていた。
話が盛り上がり、最高潮に達したときだ。
「リン、随分と楽しそうだね。私も混ぜてはくれないか?」
少しトーンを抑えた声。一気に引きつるリンの顔。振り返ると、いつの間に立っていたのかハクが冷ややかな笑みを浮かべながら立っていた。
「お…あっあー!俺、ちょっと向こうに用事会ったんだよな〜。」
リンは急いで立ち上がり、逃げるようにしてその場を後にする。ハクは彼女を冷ややかな目で見送った後、リンが座っていたところに腰を下ろした。
「A、ちゃんとくつろげているか?」
「うっうん!それなりに。」
「よかった。」
ハクはにっこりと笑った。そして、今度は千尋ちゃんの方を向く。
「準備、お疲れ様。ほとんど千尋に任せてしまった。申し訳ない…。」
「ううん!ハクだって頑張ってたよ!」
「私はそれほど…。」
219人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時