計画 ページ31
先程までしかめ面だったハクの顔にも笑みが浮かぶ。筆を置き、彼は千尋の元まで駆け寄った。そして、二人で仲良さそうに何かを話すとハクはAの方を向いた。
「A、悪いけど少し席を外すよ。直ぐ戻ってくるから。」
「あ…うん。大丈夫…。」
そして、ハクは千尋に手を引かれながら少し足早にその場を立ち去ってしまう。彼女の心の中に変なもやもやが広がる。ここの所、千尋はよくハクの所へやってくる。ハクも時折、仕事を抜け出してどこかへ行ってしまうが、きっと千尋の所だ。
すると、隣にいた紫苑が急にほっぺたを引っ張ってくる。
「ちょっと!?痛いよ。」
「……俺を見ろよ。」
「へ?何?もう一回言って?」
紫苑が吐いた言葉は客や従業員のがやがやした声だかき消されてしまった為、彼女の耳には届かなかったようだ。すると、紫苑はニカッと笑った。
「変な顔だな!って言ったの!!」
少し声を大きくして言う紫苑。Aは意地悪っぽく笑う紫苑を小突いた。
ハクが千尋に手を引かれた先には、リンと青蛙と数人の兄役と湯女がいた。
「ハク様!準備はちゃんと出来ております!」
青蛙が足元でピョンピョン飛び跳ねながら言う。ハクは改めて広々とした客間を見渡す。先程様子を見に行ったときにはなかった飾り付けが綺麗に施されている。
「リンと兄役の人達がね、ここの飾り付けをしたんだよ。」
千尋がにっこりと微笑みながら言う。
そう、彼らは無事に帰ってきてくれたAと新しく来た紫苑への歓迎会をもくろんでいたのだ。発案者は千尋。湯婆婆がこのことを賛成してくれるかは心配だったが何回も頼み込んだ結果、首を立てに振った。
「そうか。それはご苦労だった。」
今日、客が少なかったのはこの歓迎会の為であった。
そして、ハクがAに対して口数が少なく、素っ気なかったのはこの歓迎会のせいでもあった。彼女には、勿論歓迎会のことは内緒だ。そうなると彼女に対してどのような振る舞いをすればいいか分からなくなり、結果的に無口になってしまったというわけだ。
きっとこれは、“隠し事をするのがあまり好きではない”ハクの性分のせいだ。
「Aちゃんと紫苑さん。喜んでくれるといいね。」
「そうだね。」
ハクは目を細める。
油屋の一同でこうして何かをするということは久しぶりなので、ハクも他の油屋の者も少しワクワクしている。
「私も、何か手伝おう。」
ハクが言った。そして、歓迎会の最後の仕上げに皆取りかかった。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時