君が居るから ページ28
「ハク。」
「ん?何?」
「湯婆婆からの扱いって…今でもキツいの?」
ハクは、フワリと苦笑いを浮かべながら「まぁ、そこそこね。」と言った。まぁ、昨日再会したときも湯婆婆は相変わらずの営業魔だったし、意地の悪さも全く変わっていなかった。人使いならぬ神使いの荒さはご健在のようだ。
「実はね、一昨日の朝ぐらいからずっと働きっぱなしで一睡も出来てなかったんだ。……今日の仕事も大したことなかったけど、帰り道に少し眠くなってしまってね。」
「一昨日から!?」
「そうだよ?」
私の驚きっぷりにハクは少しびっくりしていた。本人は何かおかしなこと言ったかな?というような顔をしている。
「昨日はそんな素振り全然なかったのに…。」
そう言うとハクは私の方に目を向けた。薄暗い部屋の中でもハクの目は新緑の淡い光を放ち、きらきらと輝いて見える。その瞳に見える優しさに私は少しドキッとする。
「Aが帰ってきたんだ。…嬉しくて、嬉しくてそれどころじゃなかったから…。」
少し悪戯っぽく微笑むハク。
その言葉を合図に私の鼓動はさらに高鳴る。ねぇ?どうして?どうしてハクはこんなに私の心を弄ぶの?変に期待させるようなこと言わないでよ…。やっと踏ん切りをつけられそうな時にその想いを蒸し返すようなことしないでよ…。私には紫苑が居るから…紫苑の為に…私は…。
しかし、微笑んでいた彼の顔は少し曇りを見せ、顔をしかめそうな勢いで言った。
「まさか…連れが居るとは思わなかったけど。」
「あ…。ごめんね。初日から紫苑がガンとばして…。根はいいんだよ。」
「…そうだといいけど…。」
そう言うとハクは私の片耳に手を伸ばした。イヤリングがきらきらと音を立ててなる。依然として寂しそうな目で彼は言う。
「この耳飾りも…彼から?」
「え?あ、うん!おまじないっていってくれたんだ。」
「そうか…。」
ハクの伸ばされた手は力なくストンと私の膝の上に落ちる。怪我をしている方の手であるため、裾の方から包帯がちらりと見えた。落ちた其の手は私の手をギュッと握った。
「でも、帰ってきてくれて良かった。もう帰ってこないと思ったから、びっくりしたよ。とても綺麗になってたから…。」
「え……。綺麗…。」
「あ……。ちっ違う!へっ変な意味ではなく、純粋に!いや、純粋というか…何というか。」
ハクは慌てたような口調で話す。さらりと出たその一言。
ハク、どうして貴男はこんなに意地悪なの?
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時