安心する ページ27
久しぶりに入るハクの部屋。昔から思ってたけどやっぱり殺風景だ。少し茶々けた壁には何も飾ってなくて、ただ次の日に着る水干だけがかかっているだけだった。
私は、ハクを布団の上に寝かせた。ハクは疲れきったような目で天井を見上げ、ふぅーっとため息なのか息をついた。よく見れば彼の其の整った顔にも泥が付いている。
「ちょっと待ってて。今、救急箱とタオル持ってくるから。」
ハクは、力なく微笑んでゆっくりと頷いた。予想以上に疲れているようだった。そんな事に気づかず一緒に仕事に付き合わせてしまったことに申し訳なさがこみ上げる。
私は、救急箱とタオルを用意し、ついでに毛布も下の階から借りてきた。
静かに部屋に入ると案の定ハクはまぶたを落とし、眠ってしまっていた。
呼吸の深いハクの寝息が聞こえてくる。表情は先ほどよりは良さそうで、顔色も運んできたときよりは少しだけ良くなっている気がする。
私は、ハクの顔についた泥を優しくおこなさないように丁寧に拭きとった。それから彼の腕をまくり、傷口を見てみる。思ったよりも傷口は深くはないようでほっとする。傷口に消毒液を塗る。時折ハクの眉がピクリと動いたが気にせず塗って大事をとって包帯まで巻いておいた。気がつけばハクの体温も大分上がってきているようだった。
毛布をかけてやるとハクはゆっくりと目を開いた。
「A…ごめんね…。其方に迷惑をかけてしまった。」
「ううん、気にしないで。ゆっくり休んで。じゃぁ、私行くね。」
そう言って救急箱を片付け、立ち上がろうとするとハクは私の手をギュッと掴んできた。少し体が固まる。
「どうしたの?」
「行かないでA、少しだけ私のそばに居て。其方と居ると……その…安心する。」
軽く胸を突かれる。そんな感じだ。不覚にも私の胸の鼓動は音を立てる。駄目だと思っても音を立てる。
「……うん。分かった。」
私はハクの枕元に座った。
ハクは、私から目線を外しゆっくりと天井の方へと目をやった。ぼんやりと天井を眺めながらハクは嬉しそうに目を細めて言った。
「Aは…昔からこうして私の看病をしてくれたね。」
「……そうだっけ?」
「覚えてない?…そうか。もう六年以上前のことだからね。」
ハクは残念そうな目をし、眉を歪めた。いや、私の勝手な想像がそう見させているだけか。
会話が途切れ、間が空く。何か話す内容はないかと私は口を開いた。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時