今宵は多忙 ページ25
「A様!これをお願いします!」
「A様!これもです!」
父役から次から次へと資料が渡される。
猫の手を借りたいぐらいの忙しさ。Aは息つく暇もなく必死に筆を動かし、在庫の確認をして回り、足りないものは帳簿に記録した。
途中で一服。と淹れてもらったお茶もすっかりさめてしまっている。
昨日に比べてお客の数も随分と多い。目の前を他の従業員やらお客やらが行ったり来たりを繰り返し、せかせかと動いている。
今日は、きっと紫苑も忙しいのだろう。昨日のように休憩がてら遊びに来た!…なんてこともなさそうだった。
「A様、ここの記載が間違っています。」
「嘘!?ごめんなさい。」
「いえいえ、久々なのですから…無理はしないで。あ、これもお願いします。」
無理させ居るのはあんたでしょ!?
と心の中で父役につっこみをいれる。はい、わかりました。と紙を受け取り、サラサラと筆を執り文字を記す。
私が昔、働いていたときはこんなに忙しかっただろうか?…そんなことを考えながら筆を進めた。
「あぁーっ!疲れたっ!」
数時間後。何とか一段落ついた帳場で、Aは大きく伸びをした。背中の骨がポキポキと乾いた音を立てた。Aは、すっかり冷めてしまったお茶を一口の飲む。横をちらりとみると父役もほっと一息ついたようで差し入れのお饅頭を頬張っていた。
Aもお饅頭を食べようと手を伸ばしたときだった。一人の兄役が一枚の紙を持ってきた。
「A様、釜爺が薬湯作るときの薬草の在庫確認しといてくれってよ。」
「はい。」
少し苦笑いしながら彼女は紙を受け取った。お饅頭はお預けのようだ。
彼女は立ち上がり、色々な油屋で使う物品をしまっている倉庫へ向かった。大量の物品がしまわれている倉庫で薬草を見つけるのは骨が折れそうだった。
油屋の一角、古びた戸を開ける。木の独特のにおいがツンと鼻をさした。ぎしぎしと踏み出す度に床が音を立てた。薄暗い倉庫で薬草の入った箱を探す。久々に入るため、配置も変わり、何処にあるかわからず時間がかかる。
「あーっ、あった!あんな所に…。」
しばらくして、棚の上に置かれた薬草と書かれた木箱を見つける。Aは、木でできた台を出し、それに乗ってうんと体を伸ばし木箱をとろうとする。
しかし木箱をとるのに夢中になっていたのだろう。木箱を引っ張った拍子に足台ぐらりと揺れた。
「きゃぁ!」
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時