紫苑の思考回路 ページ21
「私、油屋に戻ろうと思う。」
そうAが言ったのはつい最近だった。俺は、嫌だった。理由は簡単。あいつ、ハクが居るからだ。
Aは、「ハクのことはもう何とも思ってない。」と言って俺の気持ちに答えようとしてくれている。言われなくても気づいてる。見てれば分かる。好きな女の考えてることぐらい。それに、Aは思ってることがすぐ顔に出るしな…。
だから、嫌だった。Aが油屋に戻るのも、ハクのことも、全部…全部…。
緊張しているのか油屋に着いてからのAの様子がおかしかった。笑顔が固くて、ぎこちなくて…。
「さっき千尋が来てね…」
そう言ったハクの言葉に一瞬、ピクリと体が反応したA。それを俺は見逃さなかった。あいつ(ハク)を見つめるAの目の色に悲哀があることは目を背けたくても見えてしまう。
１日の仕事が終わり、寝床についても考えるのはAのことで、まぁ、好きな女のことを考えるのは当たり前なのだろうが…。
瞼を閉じても浮かんでくるのは、Aの顔で…。
あの羊羹を貰ったときのハクを見つめる悲哀のこもった瞳のAが映り、その次に浮かぶのはハクとAが俺に背を向けて二人で仲むつまじく歩いていく姿で…。
その両者が交互に入り交じり、不安がどっと流れ込む。とてもじゃないけど眠れなかった。
だから、俺は真っ黒な筋斗雲を出して、真っ赤な朝焼けの蒼空を飛び出した。
行き先はAの部屋。休み時間に場所を教えてもらったからだいたい分かる。最上階の一角…。
窓を覗くと見慣れた背中が見えた。うとうとしてたんだろう。眠い目を擦りながらびっくりした顔をするA。心の不安を悟られないように平然と振る舞ってたけど……
駄目だった。
気づいたときには彼女は、…Aは、俺の腕の中にいて、俺はすがるように抱きしめていた。
「好きだ。」
嗚呼、何回言ったのだろうか？何回こうして抱きしめただろうか？でも、返ってくる答えは「ごめん。」それだけだった。
やっぱり今回も返ってくる答えは変わらなかった。でも、それでも俺はAのことが好きだし、これからもずっと一緒にいたい。
ふと我に返り、彼女の髪の毛から香るシャンプーの匂いにドキッとする。
慌てて体を離すと、彼女はすごく申し訳無さそうな沈んだ顔をしていた。彼女は、俺がこうして抱きしめることに何の気も起きないのかとさすがにイラつく。だから、思い切って頬をつねってやった。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます！ (2019年1月20日 22時) (
レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ﾆｺｯ あ！ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、！ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます！笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん！？君の手シリーズ読んでました！(｀・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…！ありがとうございます！これからも頑張らせていただきます！ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます！紫苑君、これから結構活躍するはずです！見届けてあげて下さい！よろしくお願いします！(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もなか | 作成日時：2015年11月19日 1時
