一つの羊羹 ページ18
「他にも分からねーことがあったら俺を頼れよ？Aは、俺の妹みたいなもんだからな。」
リンが太陽のような笑みを私に向ける。六年前もリンにいろいろとお世話になった。
ご褒美に貰ったお饅頭を兄役に盗られて泣いていた私の変わりに兄役を締め上げたリンの勇姿を私は今でも覚えている。
そんな懐かしい記憶を呼び起こしていると
隣に座っていたハクが思い出した！というような顔をして机の隅に置いてあった小さな包みを私に渡してきた。
「これ、何？……あっ！これ！私の好きだった羊羹！！ハク、これどうしたの？」
------------チッ
再び紫苑の方から小さな舌打ちの音が聞こえる。それは、あまりにも小さくてきっと私以外には聞こえていないのだろう。
緑の紙に包まれた懐かしい羊羹を手にする。
ハクがニコニコとしながら言った。
「さっき千尋が来てね。Aにこれを…って。」
----------------千尋？
ドクンッ！と変に心臓が脈打つ。彼の口から漏れたその言葉に動揺してしまう。
意識してはいけない…。もう、終わった恋でしょ？なにを今更…。
「そっそうなんだ！じゃぁ、お礼を言わなくちゃね。」
「…………。」
「えーっ！なんだよ！千尋、俺の分はねぇのかよ！」
リンがだだをこねたような声を上げる。
「リン、其方ももうそろそろ仕事に戻った方がいい。紫苑も、さっき兄役が探していた。」
「……んあ？……あぁ、わーったよ。」
「じゃぁ、Aまた後でな！」
リンは元気よく手をぶんぶんと振り、廊下を走っていった。リンは美人だし、もっとおしとやかにすればいいのにと心の中でそっと思う。
一方の紫苑は、少し間があいてから踵を返した。少し足取りが重い。疲れているのだろうか？そう思っていると紫苑はいきなり振り返りすたすたと戻ってきた。
「忘れ物？」
其の問いに彼は答えず、いきなり私の頭に大きな手を乗せた。そして、私の頭をクシャクシャッと撫でる。
「ちょっ…ちょっと！？紫苑！？」
彼のいきなりの強行にびっくりしていると紫苑は、目を細めて言った。
「忘れもん…かな。」
その紫黒色の瞳は何ともいえない複雑そうな瞳で、切なそうで……。
何か言おうと思っても言葉が上手いような言葉が出なくて、そうこうしているうちに紫苑は、踵を返して言ってしまう。
「…………。」
ハクは、その光景を何も言わずにみていた。
補足
「………。」←一回目のこのセリフは紫苑のです。二回目はハク。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます！ (2019年1月20日 22時) (
レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ﾆｺｯ あ！ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、！ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます！笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん！？君の手シリーズ読んでました！(｀・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…！ありがとうございます！これからも頑張らせていただきます！ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます！紫苑君、これから結構活躍するはずです！見届けてあげて下さい！よろしくお願いします！(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もなか | 作成日時：2015年11月19日 1時
