光る髪飾り ページ17
紫苑の手を引いて油屋の中を歩くA。特にこれといって行きたい場所がなかったので、油屋の構造をよく知っていない紫苑のためにも色々と案内した。
客間や、寝泊まりする場所、厨房や、番台…。
唯でさえ広い油屋の中、一周するだけで足がくたくたになる。Aは、紫苑の方を一瞥する。さすがの彼も疲れたのだろう、途中から彼女の後ろに回り、顎をAの頭に乗せて寄りかかるようにして歩く。
「大体このくらいかな?迷わないように気をつけてね。」
「あーい。」
頭の上から気の抜けた返事が聞こえる。
「じゃぁ、そろそろお仕事に戻りますか〜。」
そう言って帳場の方に向かって歩き始めると、彼の彼女の肩に回された手に少し力が入る。
「もうちょっと寄り道しようぜ。なぁ、いいだろ?」
「駄目だよ。休憩に入ってから結構立ってるし…怒られるよ?」
「別にいいじゃん。そん時は俺のせいにすれば。それに…A------------」
「Aーーーっ!」
紫苑が何かを言い掛けたときだ。その声は廊下の向こう側で大きく手を振り駆け寄ってくるリンによって遮られた。リンも雑用の仕事と接客の両方をこなしているのだろう綺麗な着物を身にまとっていた。
「リン、どうしたの?」
「ん?いや、ちょっと休憩に入ったからさ。ぶらぶらしててな。」
そう言うとリンは、ニカッと笑った。髪に飾られた装飾がキラキラと光る。
「悪いな。邪魔したか?」
「見て分かるだろ?今俺たちデート中なんだけど?」
「さっきまで紫苑に油屋の案内をしてたんだ。」
他愛ない話を繰り広げながら三人で帳場へ向かう。紫苑は結構毒舌な方なんだが、リンも割と割り切った性分のため特に二人が言い争うこともなく自然と会話が弾んだ。
帳場に戻るとハクが、先程と変わらぬ様子で筆を動かしていた。A達の存在に気づくとふと顔を上げた。そして、先程の言い争いが嘘のようにふわりと優しく微笑み、「おかえり。」と短くいった。
…………チッ。
そんな舌打ちする音が頭の上から聞こえたが、彼女は、聞こえないフリをした。
「ごめんなさいっ!…戻るの遅くなりました…。」
申し訳無さそうにする彼女にハクはびっくりしたように目を丸くした後、クスッと微笑んだ。
「謝らなくても大丈夫だよ。」
Aは、ハクの隣に座り、帳簿を……
「あれ?私の帳簿…。」
「あぁ、ごめん。ここにしまったんだ。」
何故か慌てたようにハクは引き出しから帳簿を取り出して渡した。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時