臆病者のため息 ページ13
「え…うわっ！？」
その唐突な一言に筆を落としそうになるA。口をパクパクさせながら混乱する彼女を見てハクはクスッと笑った。
「やはり、六年も間があくと…」
そう言いながらAにすり寄るハク。Aは、もう後ろに退くことも忘れて筆をギュッと握りしめる。
彼女の元まで来たハクは、手を伸ばす。その伸ばした手は、彼女ではなく…彼女の帳簿を手に取った。
「字も綺麗になるんだな…。昔は凄く汚かったのに…。」
感心するように帳簿を見つめるハクをAは、ポカーンと見つめる。しばらくしてその、“綺麗”が自分の字へ向けられていたことに気づき、勘違いしていた恥ずかしさや何やらが彼女の頬を赤く染めた。
「そっ…それは上達もするでしょ！」
「私よりも綺麗かもしれないな。」
「…馬鹿にしてる？」
「そんな事はないよ。」
ハクは、そう言いながら爽やかにハハハと笑った。…六年前にはない柔らかなその笑みが自然と私の胸をきつく、きつく締め付ける。
諦めた恋が再び芽生える。…そんな生易しい締めつけじゃない。彼は変わってしまった。成長した。…なのに…なのに私は……。
------------------前に進めているだろうか？
そんな見たくない疑問を私は、臆病な私は心の隅っこに隠した。
目の前をお客様がぞろぞろと歩いていく。その姿をチラリと見ながら再び、帳簿に文字を連ねる作業に戻るA。
兄役がお茶をもってきたり、お茶菓子を持ってきて、それをちょっとずつ食べながら作業をしているときだ。
「A様ぁーーーーーー！！」
どこからか聞こえてくる甲高い声と他の者達にかき消されそうな小さな足音。
青蛙だ。
青蛙は、興奮気味に頬を赤く紅潮させながらピョンと私の机に一っ飛びして乗っかってきた。ハクは、その方をチラリと一瞥したが、すぐに帳簿に向き合った。
「どっどうしたの？」
青蛙の興奮に少し押されながら怖ず怖ずと聞いてみると青蛙は、目を輝かせて両手を広げて嬉しそうに言った。
「A様！紫苑の兄貴…凄いですっ！ありゃぁ、大したもんです！」
「へ？紫苑が？…何かしたの？」
“紫苑”…その名にハクの手の動きがピタリと止まる。
青蛙は、とても嬉しそうに話を続ける。
「何かどころじゃないですよ！…指一本で大広間を一人で！一人でですよ？綺麗にしちまいやしたっ！」
Aは、その内容に胸を撫で下ろす。どうやら悪いことではないようだ。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます！ (2019年1月20日 22時) (
レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ﾆｺｯ あ！ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、！ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます！笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん！？君の手シリーズ読んでました！(｀・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…！ありがとうございます！これからも頑張らせていただきます！ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます！紫苑君、これから結構活躍するはずです！見届けてあげて下さい！よろしくお願いします！(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もなか | 作成日時：2015年11月19日 1時
