検索窓
今日:20 hit、昨日:22 hit、合計:205,610 hit

それぞれの仕事 ページ12

Aとハクの歩いていく後ろ姿をただ悔しそうにじっと見つめながら、紫苑は小さくチッと舌打ちした。

それから兄役達の方に向き直り、先ほどの悔しそうな顔は何処へやら愛想のいいにっこりと笑った。そして、一人の兄役の前に立ちニコニコしながら手を差し出した。

「紫苑と言います。よろしくお願いします。」

手を差し出された兄役は、握手をするためにその手を握った。その瞬間、紫苑の爽やかな笑みは一気に歪んだ。

バチバチッ!

その場に響く静電気のような音。そして、痛てててて!とその場にうずくまる兄役。紫苑は吹き出す。

「ぎゃははははっ!引っかかった!くくっおもしれー!」

そう言って嗤う彼の手のひらには、小さな雷のようなものがバチッバチッと音を立てていた。周りの兄役達も、湯女も何が起こっているか分からない状態。そんななか紫苑の笑い転げる声が響く。

そう、これが彼の趣味。人に魔法で悪戯を仕掛ける。その手口も毎回違い、巧妙なためとってもたちが悪い。

一通り笑った後、紫苑は未だにうずくまっている兄役に言う。

「ほら、仕事なんだろ?早く教えて。」

「あ…あぁ。」

兄役は、少しビクビクしながら紫苑を持ち場に連れて行った。





「ここ…どうするんだっけ?」
「ここには在庫数を、ここは備考を記して…」

帳場に着いたハクは、早速Aに仕事の仕方を教える。Aは、久しぶりの仕事と彼のこの隔たりのない接し方に戸惑う。

六年の月日が流れたんだ。互いに色々変わってて、少し互いに壁を作ってしまうはずだ。昨日の夜もAは、皆と、彼との再開に変に緊張していたのに…彼は違うのだろうか?

それもそうか、私にとってのハクは“好きだった人”でハクにとっての私は“幼なじみのようなもの”だから…。

そんな事を悶々と考えるAの顔を見てハクは怪訝な顔をする。

「A…大丈夫?一度に多くのことをさせてしまったね。」

「へ!?…うっううん。大丈夫!全然平気!」

そう言いながらAは、帳簿に筆で言われたとおりに記していく。一方のハクも隣の机で自分の仕事に戻る。

Aは、チラリとハクの方を見る。ピンと伸ばした背筋で、筆を持ち、流れるように書いていくその姿は綺麗な絵みたいで心なしかAも緊張してしまう。

しばらくしたときだった。

「ねぇ、A。」
「何?」

ふとAは、彼の方を見る。深緑の瞳が彼女で瞳とぶつかる。ハクは再び口を開いた。

「綺麗になったね。」

臆病者のため息→←作者から謝りたいこと



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (196 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
219人がお気に入り
設定タグ:千と千尋の神隠し , ハク , 作者は自由人   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。