淡くて苦い思い出 ページ2
「私は…千尋のことが好きなのかもしれない…」
彼の口から不意に漏れたその一言にわたしのドクンと嫌な音を立てて鳴った。
私、Aは気づいたら存在していた神様の一人だった。神様といってもさほど偉い位ではなく、私は付喪神の一種で、誰からも拝められることなかった。
そんな私は、ある日独りの神様に出会った。川の神様で、ニギハヤミコハクヌシと名乗った。私は、彼とであって世界が色づいていく…。そんな気がした。それが彼に対する恋心からなるものだと気づくのにそう時間はかからず、彼と仲良くなるのも時間はかからなかった。
その艶やかな黒髪と、綺麗な深緑の瞳が私はとても好きだった。
そんなある日、彼はひとりの少女を助けた。名前は千尋。四歳くらいの小さな女の子。
私達と同じくらいの年齢の子。
だから、人間という存在が物珍しい私たちは彼女とすぐに仲良くなった。そして、いつか彼の隣は千尋の者となり、私は第二の存在となっていった。
そんなときの彼から漏れた一言が、
「私は…千尋のことが好きなのかもしれない。」
だった。
それを聞いて私は悔しくて、悔しくて泣いた。今までここまで泣いたことがあっただろうかというくらい泣いた。
それが私の第一の失恋。
それから間もなく、彼の川は埋められることになり、私たちは逃げるように湯婆婆の経営する油屋に行くことになった。
私は嬉しかった。また彼の隣に私が居ることが出来る。そう考えていたから…。リン達とも仲良くなって私はとても楽しかった。
私たちが12歳の時のあの事件が起こるまでは…。
千尋が来たのだ。久しぶりの再会に彼、ハクはとても嬉しそうだった。湯婆婆にこき使われて色が悪かった顔も生き生きとしている気がした。
--------------また私は彼の隣にいられなくなった
いや、むしろ最初から居なかった。ハクの心は彼女しか居なかった。
これが第二の失恋。
二人が手をつなぎ、キラキラした顔で天使のように蒼空から降りてきたとき、私はもう勝ち目がないと思った。もう、此処にいたくないと思った。だから、私は湯婆婆に言った。
魔法の修行に行きたいと。旅に出たいと。
勿論、快く承諾はしてくれた。
契約でいつかは帰ることを誓い、私は誰にも何も言わずに出て行った。言い換えれば、此処から逃げた。
そして、六年の月日が流れた。
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レモン(プロフ) - はじめまして、ハクも格好いいけど紫苑の方が可哀相に思えて、紫苑が好きになってきました。これからも応援してます! (2019年1月20日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
しろ - ほほぅ…誤って評価を…ならあなたのかわりに私がいれないでおきます((ニコッ あ!ごめんなさい。誤作動でおしちゃいました★ (2018年12月15日 21時) (レス) id: 7e3c093cf9 (このIDを非表示/違反報告)
名無し43692号(プロフ) - 作者様から返事が、、!ありがとうございます(^O^) 紫苑君の活躍期待してます!笑 ずっと応援してます(^-^)/ (2016年3月26日 19時) (レス) id: 9d06ba8ba1 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 季紀さん» 季紀さん!?君の手シリーズ読んでました!(`・д・´)売ってる本みたいだなんて…そんなそんな…!ありがとうございます!これからも頑張らせていただきます! (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
もなか@中身はこしあん(プロフ) - 名無し43692号さん» ありがとうございます!紫苑君、これから結構活躍するはずです!見届けてあげて下さい!よろしくお願いします!(´▽`)ノ (2016年3月26日 18時) (レス) id: 143efacaa5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もなか | 作成日時:2015年11月19日 1時