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すべての前話3 ページ5

一人でいたい時に、家の近くに、丁度良い場所があった。


至って普通の公園・・・なのだが、遊具は錆び付き、年中枯れ葉が落ちていて、広さもあまりないせいか、殆ど人はいない。


園内を近道にと通り過ぎる人もいなくて、いつも私が行く時は、独占状態のようになった。




「ーーー・・・信じ〜るこーとにさえ、臆病ーに〜なって〜・・・こんな〜、世界で〜、何を望むと言うのーーー。」




気に入っている歌を小さく口ずさみながら、私は塗装の剥げたブランコに腰を下ろした。


かなり古いからか、ギイィと鎖を軋ませて、ブランコは僅かに揺れる。


ブランコが低いせいで、座れば、膝が高くなる・・・。


身長が伸びたってことかなぁ、と考えながら、私はそっと両足で地面を蹴った。


ギュッと両側の鎖を握れば、冷たく硬い、錆びた鉄の感覚が掌に伝わる。




目を引くものも気を引くものも無いから、誰もいない。


音もない。あるのは、空を切るブランコの、キィ、キィ、という寂れた音だけ。


優しい香りも無くて、あるのは、鉄のツンとした匂いだけ。


誰からも忘れられて、ただ朽ちていくばかりの、ここはーーーーーー




「・・・・・・もしかしてこの公園は、私の心の具現化。」




ボソッ・・・と口から出たその言葉は、思いの外、私の心に違和感なくおちた。


同心を見つめるような気持ちで、公園の針葉樹を眺めていればーーー


「いや悲し過ぎだろソレ。」


独り言のつもりで、何の返事もないだろうと思っていたが・・・私の声では無い誰かの声が聞こえて、ギクリとした。


ガシャンッ!と鎖を鳴らして振り向けば、数メートル後ろに、見覚えのある人が立っている。




「よう、空ちゃん。まぁた兄ちゃんに苛められたのか?」




「・・・け、研二くん・・・?」


私は、目を見開いて、まさか・・・と疑問に思いそう呟いた。


研二くんとは、兄の同僚で、同じ爆発物処理班であり、私も何度か会ったことがある人だ。


本人曰く、私が幼い頃から私を知っているようで・・・今まで色々と、良くしてもらった記憶がある。


「な、何でここにいるの・・・?」


首をかしげて、そう聞けばーーー彼は面白そうにニヤリと笑い、クイ、と顎を上げた。




「松田ん家に行こうとしてさ・・・近道しようと思ったら、空ちゃんがいてな。」




何かあったか、と優しい声で言った研二くんに、私は泣きそうになった。

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太田(プロフ) - 面白かったです。更新、応援しています! (2020年5月24日 2時) (レス) id: b12bd70a19 (このIDを非表示/違反報告)
かれん@ほりえったー(プロフ) - 面白かったです!更新楽しみにしています!頑張ってください! (2018年6月11日 4時) (レス) id: 8c9c64aaaf (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - マキ松ミツバさん» コメント、ありがとう、ございます…貴方にそう思えてもらえて光栄です (2018年4月14日 18時) (レス) id: f0f38a4a80 (このIDを非表示/違反報告)
マキ松ミツバ(プロフ) - 面白かったです(^^♪ (2018年4月14日 18時) (レス) id: d15feb6140 (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - あさん» コメントありがとうございます!読むのお早いですね…これからもよろしくです! (2018年4月14日 18時) (レス) id: f0f38a4a80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れんり x他1人 | 作成日時:2017年12月8日 14時

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