あい。 ページ7
「は、はぁ……やっと終わった」
よっこいしょ、と年寄り染みた声を漏らしながら、私は腰を起こす。
……うぅ、ずっと屈んでいたから腰が痛い。
トントンと軽く腰を叩きながら顔をしかめたが、こればかりは時が経って治るのを待つしかない……
歳かな？いや、な訳ないか。
一人で自問自答の世界に入りかけて、いかんいかんと首を振った私は、
掃除をして多少は綺麗になった部屋をグルリと見回す。
埃を被っていた机も棚も綺麗になって、散らばっていた何が何だか分からない書類も、取り敢えず纏めておいた。
あとは、それをどういうものかに分けて…………
そこまで考えて、私は「あ」と声を漏らして振り向いた。
視線の先には、壁際に立て掛けられた三日月。
そういえば、折角なんだし三日月の手入れもしてしまおうか……そう思ったのだ。
「…うーん。手入れ部屋、あるんだっけ」
へし切り長谷部が言っていた部屋割りの中の、“手入れ部屋”を思い出した。
いや……でも、母屋にあるんだっけ、ここからじゃ少し遠いな。
途中で誰か他の刀剣と遭遇して、騒ぎにはなりたくないし……
警戒させない為にも、部屋から出ないことが得策だろうか…？
私は頭を捻ってどうするべきか考えた。
実際に対面して話したのは長谷部しかいないから、どれくらいかは分からないけど……
取り敢えず、審神者が好かれていないということだけは、覚えておかなければならない。
となるとやはり、手入れ部屋に行くのは止めた方が良い＿＿＿＿
何気無く顔を上げた途端、私は視界の端に不思議なものを捉えた。
部屋の目の前、そこに広がる庭。
その端に、何か…………“何か”が、ある。
本当に何気無く存在していたから、一度スルーしてから思わず二度見をしてしまった。
数歩横に移動して視線をずらして見てみても、それが何かよく分からない。
手入れも忘れて、眉間にシワを寄せてまじまじとそれを見て、
何だアレは、と不思議を通り越して寧ろ訝しい気持ちになった。
「……………よ、よし…念のため」
無いとは思うが……もしかしたら、あの怪しい物は何か敵側の罠かかもしれない。
そう思って、私は意を決してそっと部屋から出て、庭へと降りた。
靴も履いてなければ靴下も履いておらず、素足に包帯を巻いたままだが……この際気にはするまい。
そろそろと、じっと白い何かを見つめながら、私は近付いていく。
距離を1m辺りに詰めて、顔を近付けて覗き込もうと＿＿＿＿
した時に、ぐるんっと視界がひっくり返った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 420人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れんり(プロフ) - 燐−Rin−さん» 本当、だッ！！ご指摘ありがとうございます(ごめんよまんばちゃん…)！嬉しいお言葉もありがとうございますッ。とても励みになります！ (2017年7月23日 8時) (
レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
燐−Rin−(プロフ) - コメント失礼しますぅぅぅ内容が濃くてとてもハマりました！ それと、国広の山姥切の【婆】ではなく、【姥】です！失礼しました！ (2017年7月22日 23時) (レス) id: 775928a73b (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - はせべまゆさん» コメントありがとう……でも何故二回もしたんですか(笑)絶対笑っているでしょう、ちゃんと読んでる？(訳:別に読んで欲しいとか、嬉しいとか思ってないし) (2017年7月17日 21時) (レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
はせべまゆ - 素晴らしすぎる (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 素晴らしい (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：れんり | 作成日時：2017年6月30日 17時
