あい。 ページ49
＿＿抜くのか、俺を？
三日月に手をかけた時、そんな声が聞こえた。
でも、その声は聞こえるはずのない……だから、幻聴だ。
一瞬まさか、と思ったものの、すぐにそう理解した。
でも、それでも……私は三日月が本当にそう思っている気がして、
私は少し、三日月を握る手の力を緩めた。
別に一期一振さんを斬るつもりはない。
反射的に動いただけの……ただの、威嚇。
仮に、五虎退君のお兄さんだということがなくても、
私は、ここの本丸の刀剣を傷付けるつもりはない。
それでも、もし向こうが抜いたら……
その時は、霊力で五虎退君諸とも防衛を続けるつもりだった。
神経が研ぎ澄まされる程の、一触即発の空気は、
意外にも、一期一振さんが刀から手を放したことで……散っていった。
唖然として彼を見つめていると、
背後から小さな声が聞こえて、私は肩を跳ねさせた。
警戒も忘れて振り向けば、それまで寝ていた五虎退君が…うっすらと目を開けている。
「…あれ……あるじ、さま…？」
まだ寝惚けたような声が発せられて、その視線が私に向く。
「ごめん、起こしちゃったね。まだ寝てていいよ…」
優しくそう言えば、ボーッとしたような表情を、ふにゃりとした笑みに変えて……
「…何だか、あったかい…や……」
安心したような声でそう呟いて、ゆっくりと瞼を閉じた。
その顔を、見守るように見つめていれば……
「…五虎退」
それまで聞いてきたどの声とも違う、慈愛に満ちた声が部屋に響いた。
思わずギョッとして振り向けば、
慈しむような目で、五虎退君を見つめる、彼が。
「……あんなに安心したような顔の五虎退は、いつ振りだろうか…」
全ての毒素が抜けたような声に、私も自然と腕から力が抜けていく。
項垂れるように頭を下げた彼は、暫くの間黙り込んでいた。
けれど、その静寂はやがて＿＿＿＿
小さな嗚咽に、変わっていく。
僅かに震える肩に、突然“一期一振”が小さく見えた。
私は言葉を無くして、弱さを露呈したその姿を……ただ見つめる。
「そうか………やっと、苦しみから解放されたんだね…」
その言葉は、紛れもなく五虎退君に向けられたもので。
どこまでも弟想いな、心優しい兄だった。
「五虎退が、乱が……貴方という審神者を、主と認めた…」
間を空けて続けられた言葉は、私に向けられたもので……
一瞬驚いたものの、私は続きを待つ。
「…貴方を、信じてもいいんですか…？」
その言葉に、返すべき言葉はやはり。
「…あい」
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れんり(プロフ) - 燐−Rin−さん» 本当、だッ！！ご指摘ありがとうございます(ごめんよまんばちゃん…)！嬉しいお言葉もありがとうございますッ。とても励みになります！ (2017年7月23日 8時) (
レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
燐−Rin−(プロフ) - コメント失礼しますぅぅぅ内容が濃くてとてもハマりました！ それと、国広の山姥切の【婆】ではなく、【姥】です！失礼しました！ (2017年7月22日 23時) (レス) id: 775928a73b (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - はせべまゆさん» コメントありがとう……でも何故二回もしたんですか(笑)絶対笑っているでしょう、ちゃんと読んでる？(訳:別に読んで欲しいとか、嬉しいとか思ってないし) (2017年7月17日 21時) (レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
はせべまゆ - 素晴らしすぎる (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 素晴らしい (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れんり | 作成日時：2017年6月30日 17時
