あぁ。 ページ39
それは、弱々しい声だった。
決意をして何かを変えようとするには、あまりにも相応しくない声。
それでも、想いは一杯に込めた。
いち兄の目を、しつかりと見て言った。
こんなにも勇気を振り絞ったのは、声を出したのは、いつぶりだろう。
いち兄も、乱も、皆が目を見開いて僕を見る。
その目には、驚きと……信じられないものを見るような、容赦のないもの。
その視線と疎外感に打ちのめされそうになりながらも、僕はそれらを振りきるように……
「…いち兄、僕はそろそろ……ゆっくりしたいんです…」
肩に置かれた手を、振り払うことはしなかった。
そうしたら、いち兄に対して酷く残酷だと思ったからだ。
ただ、退き下がるように立ち上がった。
スルリと垂れ落ちたいち兄の両手が、力なく畳に降りる。
この言葉は誰が言うよりも、僕が言った方が良いと思った。
「…全部、分かっているつもりです。………でも、いち兄達がどうしてもあの審神者さんを信じられないなら……」
一拍置いてから、僕は視線を誰からも外して、後ろを向いた。
「……僕は、あるじさんのところに行きます…」
縁を切る、というつもりはない。
……けれど、望まれたらそうするしかない。
そうなるかもしれないこの選択に、けれど僕は後悔を抱かなかった。
あるじさまの部屋に行こう。
そう思って、僕はそのまま部屋を出ていった。
目に涙を溜めながら、一人ではやけに長く感じる廊下を歩く。
後悔はしない、と思ったけど、やっぱり……
兄弟を裏切るようなことをしたのは、心に重くのしかかった。
落ちそうな涙を腕で強く拭えば、ジン…と少し瞼が痛む。
あるじさまは、今、どこにいるんだろう？
お皿を持って行ったから、台所かな…？
そう思いながら、一人廊下を歩いていると……
「…ッご、五虎退…！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 420人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れんり(プロフ) - 燐−Rin−さん» 本当、だッ！！ご指摘ありがとうございます(ごめんよまんばちゃん…)！嬉しいお言葉もありがとうございますッ。とても励みになります！ (2017年7月23日 8時) (
レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
燐−Rin−(プロフ) - コメント失礼しますぅぅぅ内容が濃くてとてもハマりました！ それと、国広の山姥切の【婆】ではなく、【姥】です！失礼しました！ (2017年7月22日 23時) (レス) id: 775928a73b (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - はせべまゆさん» コメントありがとう……でも何故二回もしたんですか(笑)絶対笑っているでしょう、ちゃんと読んでる？(訳:別に読んで欲しいとか、嬉しいとか思ってないし) (2017年7月17日 21時) (レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
はせべまゆ - 素晴らしすぎる (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 素晴らしい (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：れんり | 作成日時：2017年6月30日 17時
