あぁ。 ページ38
「乱、五虎退っ！」
審神者さんが大広間から出ていった、少し後、
呆然と入り口を見つめていた僕と乱に、いち兄が慌てた様子で声をかけてきた。
振り向けば、畳の上を走ってきたいち兄に、僕たちは肩を掴まれる。
その顔が緊張と悲哀に満ちていて、僕は何も言えなかった。
大丈夫だよ、いち兄。
もしその言葉が言えても、きっと皆はそうは思わないかもしれないけれど……
僕が頷くと、釣られるように乱も頷いて……
「良かった…何もされなくて……本当に…」
肩に置かれた手に、ぐっと力を込められた。
うつ向いたいち兄に、僕たちは顔を見合わる。
腕の中の虎さんも、何かを感じたのか、心配するように鳴いた。
……正直、虎さんがいつの間にか審神者さんの所に行っていた時は、心臓が止まりな程驚いた。
それでも、あの新しい審神者さんは、近寄って来た虎さんを…………
「…虎さんがこんなに嬉しそうなのは、久し振りだな……」
虎さんを見ていたら、無意識のうちにそう言葉が漏れていた。
隣から「えっ」と驚く声が聞こえて、うつ向いていたいち兄がハッとしたように顔を上げる。
自分が言った言葉の意味に気付いた時には、もう遅かった。
「……ごこ、たい…？」
驚いたような、困惑したような、どちらともいえないいち兄。
その目はまるで、「信じられない」とでも言うようで……
審神者さんが好きな訳じゃない。
振られた暴力も、暴言も……経験した全ては、僕の記憶に焼き付いて、忘れられない。
それでも、それでも僕は……
全ての審神者さんが、全員酷い人とは思えない。
きっと優しい審神者がいて、それがきっと……
「………あの審神者さんは……悪い人じゃないと思うんです、多分…」
消えかけていた希望が、また蘇ることを願って、
僕は勇気を振り絞って、いち兄にそう言った。
「…五虎退」
それ以上言うな、という様に、いち兄は目を細めた。
一瞬言葉が止まって、僕は言い留まる。
……それまでずっと、僕を守ってくれたいち兄に歯向かうのが怖いんだ。
でも、それじゃあ僕達は、誰も何も変われない…！
「…だって、虎さんを優しく抱っこして…可愛いね、って、笑ってくれた…！」
「……＿＿姉も、“たった数人の人間だけで、全ての人間を決めるな”って…言ってたんじゃないんですか…！？」
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れんり(プロフ) - 燐−Rin−さん» 本当、だッ！！ご指摘ありがとうございます(ごめんよまんばちゃん…)！嬉しいお言葉もありがとうございますッ。とても励みになります！ (2017年7月23日 8時) (
レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
燐−Rin−(プロフ) - コメント失礼しますぅぅぅ内容が濃くてとてもハマりました！ それと、国広の山姥切の【婆】ではなく、【姥】です！失礼しました！ (2017年7月22日 23時) (レス) id: 775928a73b (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - はせべまゆさん» コメントありがとう……でも何故二回もしたんですか(笑)絶対笑っているでしょう、ちゃんと読んでる？(訳:別に読んで欲しいとか、嬉しいとか思ってないし) (2017年7月17日 21時) (レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
はせべまゆ - 素晴らしすぎる (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 素晴らしい (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れんり | 作成日時：2017年6月30日 17時
