あい。 ページ28
「……主。お目覚めになられたでしょうか？」
こんのすけの指示の元、着々と書類処理をしていた私の耳に、誰かの声が届いた。
はっとして襖の方を向けば、誰かの人影がある。
この声は、確か……長谷部さん？
何用だろう、と不思議がりつつ、私は「はい」と答える。
すると、静かに襖が開いて……
「主、昨日は………すみません、お仕事中でしたか」
何かを言いかけたものの、私を見て口をつぐんだ。
あ、と思い私はやりかけの書類に目を向ける。
「あっ、いえ。全然大丈夫です。……それより、どうかしましたか？」
私は咄嗟に書類を隠すよう机の端に寄せて、長谷部さんに向き直る。
すると、彼は私のやっていることを中断させてしまった……
とでもいいそうな、不服そうな顔で私を見つめた。
「いえ……ただ、昨日の夜卒倒なさったので、気分は如何かと……」
少し心配するような声に、私はギョッとする。
何か気の効く返事をしないと……そう思った私は、
「あ…昨日はご迷惑おかけしてすみません。しっかり寝たので、大丈夫ですよ」
咄嗟に吐いた嘘を通そうと、疲れた顔で苦笑いを作って見せた。
でも長谷部さんは、「…そう、ですか？」と勘繰るような目を向けてくる。
頼むからバレないでくれ、ポーカーフェイスを保ってそう願っていると……
「それでは主、朝食はどういたしますか？お仕事が忙しい様なら、お持ちしますが…」
続けてそう言った長谷部さんに、私は一瞬考え込んだ。
朝食、か……
どうしよう、昨日は無下にも食べる機会を失ったしな……食べるべきだろうか？
でも、昨日は昼も夜もご飯を抜いているから、お腹は空いているはずなんだけど……
睡眠不足のせいか、食欲が無かった。
暫く悩んだ末に、私は苦笑いと共に顔を上げる。
「……すみません。今はお腹が空いてないので、大丈夫です…」
そう答えれば、長谷部さんは「分かりました」、と。
「…では、失礼します」
訝しむこともなく、一礼してあっさりと去っていった。
少なくとも怪しまれるのでは、と思っていた私は、内心で驚く。
まぁ、ただ関心が無かっただけだろうか……
人の気持ちなんて考えても分からないし、ましてや長谷部さんなんて刀だ。
考えるだけ疲れるだろう、と私は結論付けた。
「…主さま、良いのですか？」
「…はい。お腹が空いてないのは、本当なので」
机の上に散らばった書類に視線を移して、私はそう呟いたのだった。
「…………」
長谷部さんが、そんな私の嘘を見抜いているとは知らずに。
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れんり(プロフ) - 燐−Rin−さん» 本当、だッ！！ご指摘ありがとうございます(ごめんよまんばちゃん…)！嬉しいお言葉もありがとうございますッ。とても励みになります！ (2017年7月23日 8時) (
レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
燐−Rin−(プロフ) - コメント失礼しますぅぅぅ内容が濃くてとてもハマりました！ それと、国広の山姥切の【婆】ではなく、【姥】です！失礼しました！ (2017年7月22日 23時) (レス) id: 775928a73b (このIDを非表示/違反報告)
れんり(プロフ) - はせべまゆさん» コメントありがとう……でも何故二回もしたんですか(笑)絶対笑っているでしょう、ちゃんと読んでる？(訳:別に読んで欲しいとか、嬉しいとか思ってないし) (2017年7月17日 21時) (レス) id: e682cb1174 (このIDを非表示/違反報告)
はせべまゆ - 素晴らしすぎる (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 素晴らしい (2017年7月17日 20時) (レス) id: bb40afa781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：れんり | 作成日時：2017年6月30日 17時
