動揺 ページ9
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反応したも、既に遅し。
自巳に腕を取られ、背負い投げを決められる。
顔面の横に、短刀を突き刺して。
「…あの、降参してくれません?早く終わらせたいんですよ」
そう言って見下す自巳の声は、ひどく冷たかった。
会場は静まり返り、自巳の声がやけに響く。
はぁっと一息ついて、麗から一歩離れる。
もう終わりか。
そう思い、横を向いた時だ。
冷たい、自身と似た眼を持つ人を見つけてしまったのだ。
「A」
「っ……と、さん…」
確かに、自分だけに聞こえた声。
自巳は固まり、小さく呟く。
それがいけなかった。
「っやあっ!!!」
はっと気づき、双剣を召喚し防御の体制になり、後ろに飛ぶ。
だが、麗の方が速かった。
ばさっと自巳の長ったらしい前髪が切れた。
麗のナイフが当たったのだ。
黒髪が風に揺れる。
黒髪の奥にある、真紅の目が、虚ろに光る。
「え…」
華麗に着地した自巳。
すぐに体制を立て直し、麗の胸元をつかみ、場外に飛ばした。
いや、投げ飛ばしたの方が正しいのだろうか。
麗の体は床に強く打ち付けられた。
はぁはぁと肩で息をする自巳。
ちらりとの横を見る。そこには何もなかった。
わぁっと観客席から声が上がる。
ふらっと倒れかける自巳だが、いつものように姿勢を正し麗の元に歩み寄る。
「いっ…ち、近寄んないで!!」
手を差し出す自巳の手を振り払う。
「……うっさいですねぇ。あんたを治してやるんですよ。すぐに痛みから解放されたいなら、掴んでください」
何もうつさないような、真紅の目に見つめられ、麗は渋々手を握った。
途端、睡魔が体を襲う。
ぱたんと横になる麗を見て自巳は駆けつけてきたSクラス達に眼を向けた。
「まいえんじぇる!大丈夫?前髪とか…」
「姫川どうすんだよ」
「…姫川さんは、今治療中です。保健室まで運んでやってください。前髪などは平気です。では」
さっさと立ち去る自巳を止めたのは、まふまふだった。
「……あんた、何者なの」
「…普通の人間ですよ?」
訝しむまふまふの眼を見つめ返し、自嘲するかのように笑った。
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暁(プロフ) - なっ、、、、、最高やん!! (10月8日 20時) (レス) @page14 id: 7af3ce7feb (このIDを非表示/違反報告)
Marina3931(プロフ) - めっちゃ面白いです!続き気になります!更新頑張ってください!応援してます! (2019年3月24日 21時) (レス) id: 51b9f66c6c (このIDを非表示/違反報告)
ちあき(プロフ) - 序章が終了になって、早く続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年3月20日 20時) (レス) id: c428feaf44 (このIDを非表示/違反報告)
闇に染まった林檎 - いろはす@みかん味さん» 有り難う御座います。文才もっと鍛えられるよう、頑張ります。 (2019年1月21日 18時) (レス) id: 1a0ea6d466 (このIDを非表示/違反報告)
いろはす@みかん味(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください! (2019年1月20日 23時) (レス) id: 467fd6b5c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:闇に染まった林檎 | 作成日時:2019年1月19日 18時