おいかわとおるすいっち！【及川徹】

17：おいかわすいっち ページ17

「おいかわすいっち、お」





俺は強くなるよ。

俺は強くなる、誰よりもね。

お前が居なくても立派に立っていられるように、お前を胸張って応援できるように。

お前を応援して、お前がちゃんと笑えるようになって、

そしたらきっとまた、あのカフェで紅茶を飲もう。



あまくて、あまくて。うっかり眠っちゃいそうなくらい安心するあの空間で。





「おい、かわすいっち、、ッい、」





いつでも応援してるよ。

誰がはなに何言ったって、俺はいつだってはなの味方。はなを応援しているよ。

はなはいい奴だから、きっとこれからいろんな人に応援される。

いろんな人から期待されて、きっとプレッシャーもかけられる。


そんなときは俺のこと、思い出して。






気づけば彼女は、すいっちを押す前よりずっと顔をくしゃくしゃにさせて泣いていた。

でもそれはひどく暖かい涙で、俺までつられて泣いてしまいそうだった。





「っ、おいか、わ、す、、ッ、」




泣くなって、がんばれはな。




息を詰まらせながら、嗚咽を吐きながら。

一生懸命に声を絞る彼女がとても綺麗に見えた。







「おいかわ、すいっち。、、っか、」






傘をさしてくれてありがとう。


あの日、あの時、あの場所で。

雨が降って雨宿りして、濡れて帰ろうって思ってた時。

傘をさしてくれたのが、お前でよかった。






お前で、よかった。






もう声も出ないくらい涙を流す彼女に、俺は手を差し伸べることはできなかった。

暖かい涙に俺まで涙しそうになったのは、幸せなんて綺麗なものじゃなかった。






涙が頬を伝うたびに、足元にしずくが落ちるたびに、俺の心が痛むばかりだった。









「、、ッ、とおる、、っ、」








なさけない、おれまでいたくてなきそうだ。





　

　

18：わ→←16 ：とおるすいっち

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す