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「私は、花火みにきたんです」
一生懸命おしゃれして、
浴衣の着付けも覚えて、
馬鹿みたいに時間かけて来たんです。
楽しみにしてたんです。
「それ、なのに…ッ何もしないで帰るなんて嫌です…ッ」
そんなに怒らなくてもいいじゃないですか、
私だって寂しかったんです。
みんなは合宿に行っちゃって、私だけ仲間外れみたいで悲しかったんです…ッ
もう涙は我慢できなくて、目から溢れて頰を伝い、地面に落ちてアスファルトに黒いシミができる。
「…怒ってんちゃうよ」
言ったやろ、心配やって。
こんなときに、大きな手で頭を優しく撫でて、
私の顔を覗き込んで優しい声を出す彼が
どうしようもなく愛しくて、大好きで。
「花火なんて、ここじゃなくても見れたやろ」
「ここじゃないとだめなんです」
「なんでや」
「ッそんなの…!」
だって、ここじゃないと北さんに会えない。
会えるかも、ってどきどきすることもできない。
北さんが好きで、好きで、
会いたくてしょうがなくて。
顔を上げて、北さんの目を見て、
そんなの、あなたがいるからじゃないですか。
なんて大きな声では言えなくなってしまった。
「なんや、ぼーっとして。」
「…北さん、笑ってるの?」
顔を上げて見えたものは、私を見つめた彼がひどく優しく笑っている顔だった。
「だって、寂しかったとか言うんやもん」
楽しみにしたったのに、とか。
そんなに怒らんでもええやんとか。
泣いてるのも初めて見たしな。
「Aって結構、わがままの泣き虫なんやなあ思って」
しゃあない、付き合うてやるから元気だし。
せっかくの浴衣やしね。楽しまんとあかんな。
いくで。
当たり前のように私の腕を引いて、人混みの中を歩いていく彼の後ろ姿を見つめて、
私は夢を見ているのだろうかと空いている手で頬をつねった。
つねった頬は結構な強さで、
痛みなのか、嬉しいが故なのか。
涙がもう一粒頬を伝った。
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めめこむまーりん(プロフ) - 続編楽しみに待っています (2020年4月15日 17時) (レス) id: 43047aa610 (このIDを非表示/違反報告)
Ruu(プロフ) - 北さーーーん(涙) この先どうなっちゃうのかめちゃくちゃ気になります(涙) 続編お待ちしてます! (2020年4月13日 19時) (レス) id: b4a2fe1890 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ネネ | 作成日時:2020年4月10日 5時