一瞬の抱擁 ページ38
ht「初めてか？」
『はい』
ひとらん様に右手を引っ張られる。
左手は手綱を持ち、左足を垂れ下がった輪っかに掛け、ひとらん様の力に合わせてジャンプをすれば…
『乗れました！！』
私は外道丸ちゃんの上に乗る事ができた。
風が気持ちいい。
早くもなく遅くもなく、ちょうど良い速度で走る外道丸ちゃんは本当に頭が良いと思う。
初日に会って担いできたゾム様とは気配りが違う、なんて思いながら。
城から離れしばらく行くと、広大な畑が見えた。
同時に遠目からでも分かる、黒い膜。
外道丸ちゃんの速度が落ちて止まる。
おりるよう促しているんだろうが、ひとらん様は動こうとしない。
『ひとらん様？おりないんですか？』
不思議に思って声をかけると、後ろから手綱を持つ為に回されていた両腕で一瞬ギュッと抱き締められる。
え？と反応するより先に、ひとらん様が外道丸ちゃんからヒラリとおりた。
「ああ、悪い」
何事もなかったように、まだ外道丸ちゃんの上にいる私へ向かって手を伸ばしてくれる。
…さっきのは気のせい？
実は私、欲求不満なのだろうか。
ひとらん様の腕を借りて地面へおりれば、ひとらん様は外道丸ちゃんを自由にした後、畑へ案内してくれる。
そこには男性が沢山いて、農作業に精を出していた。
ht「俺の隊は城を守る事が任務だが、半々に別れ農作業もおこなっている」
聞けば平和な今、城下町から献上される食料では足りず、食料不足解消の為の政策だが、収穫が伸びず困っているらしい。
エーミール様から借りた本にも載っていたが、おそらくその原因は…
『ひとらん様、これを』
ht「ん？…これは、黒水晶？」
ポケットの中の割れていない黒水晶をひとらん様へと手渡す。
『この畑には黒いモヤが膜の様に張っています。これをひとらん様が持って作業する事で、改善がみられるかも知れません』
ht「でもこれは貴重な物で、戦争を起こ」
『分かってます。なので全員には渡せません。私が信頼出来る人にしか渡しません』
ひとらん様の言葉を遮って言えば、ひとらん様の凛々しいお顔が少し困り顔をしていた。
『ひとらん様の事、信頼しています』
あんなに純粋な目をした外道丸ちゃんが、ひとらん様の事をとても大好きな時点で、この人は大丈夫だと信頼できる。
ひとらん様は手の中にある黒水晶に視線を落としてから、また私を見た。
その瞳は私と同じ黒い瞳で、外道丸ちゃんと同じく純粋な瞳をしていた。
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ゆかり(プロフ) - わぁーー、めっちゃ嬉しい！ありがとーございます！書きたい話はまだまだあるので、頑張りますね。 (2021年11月3日 20時) (
レス) id: 22f5afe48d (このIDを非表示/違反報告)
すいみん。(プロフ) - とても面白いです！どストライクにハマる世界観、書き方、夢主の性格...など！めちゃくちゃ好きです。次の更新楽しみにしています。無理せず頑張ってください！ (2021年11月2日 23時) (レス) @page31 id: 89ac922806 (このIDを非表示/違反報告)
ゆかり(プロフ) - 御三方、コメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです！頑張る励みになりますね。そして銀狐様、ご指摘ありがとうございました。コソッと直してみました！ (2021年10月25日 12時) (レス) id: 22f5afe48d (このIDを非表示/違反報告)
銀狐(プロフ) - この作品好きです！これからも御体に気を付けながら頑張ってください！あと大食漢ではないでしょうか？ (2021年10月25日 10時) (レス) @page18 id: b88b2ea9fb (このIDを非表示/違反報告)
シー - え、めちゃくちゃ好きです！！応援してます！！ (2021年10月21日 3時) (レス) id: 7d376a875d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆかり | 作成日時：2021年10月15日 6時
