【文スト】いつか観た夕焼け【太宰治】

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「……で、何用ですか？」

「急に呼び出して悪いね。実はA君にお願いがあって。」

「……お願い、ですか」



時間を潰そうと考えていたところに、首領からの召集がかかった。

私はお願い、という言葉に少しばかり、顔を歪める。


首領にお願いなんて言われて断れる訳がないのに。

＿命令＿ではなく＿お願い＿と云う首領は本当に狡い人だ。



「今、芥川君達が追っている件があるだろう？」

「はい」

「中々手古摺っている様でね。少しばかり、A君に手伝って貰いたいのだよ」

「……はい」



何故だろうか。

嫌な予感しかしない。



「で、お願い出来るかな？」

「……勿論、お任せ下さい」

「君ならそう言ってくれると思っていたよ」



相変わらずの笑顔に若干苛立ちを覚える。

首領には何が見えているのか、本当にわからない。
そして、何を考えているのかも。


＿＿あの人を思い出してしまう。


下唇を噛み締め、部屋を出て自室に戻る。

未だに忘れられない自分に苛立ち、私を置いて行ってしまったあの人に哀しむ。

色々な感情がごちゃ混ぜになって一種の気持ち悪ささえも覚える。


時間まで、未だ大分あるのを確認し、私は静かに横になった。

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