25 ページ26
.
キーケースをジーっと見る俺の様子に、
めめは気恥ずかしくなったのか、
「いや、ほんと安物だし、こんなプレゼント今時中学生ですらしないかなって…思って…辞めようかなとか渡さないでおこうかなとか、悩んだんだけど…、」
そう慌てた様子で言葉を紡ぐ。
めめは浮気がばれた夫のように、必死に言い訳をする。
「あげたくて、なにか、この旅行の思い出が形に残るものを、あげたくて…、」
めめはだんだんと声を小さくさせて、自信なさげにそこまで言うと、
口をすぼめて俺の様子を窺う。
「……やっぱり、いらない、よね？」
ばかだな、めめは。
めめからもらったものなら、俺はなんだってうれしいのに。
めめからもらうものなら、たとえそれがめめの靴の泥だってうれしい。
いや、それはちょっと盛った。さすがにそれはうれしくないわ。
「……こんな…、」
少しうるっとする瞳から涙が零れてしまわないように、必死で笑顔を作った。
「こんな、しあわせでええんかな、俺…、」
ぎゅっとキーケースを握りしめる。
「めめ、ありがとお、うれしい、ほんとにうれしい、ほんとにありがとう、」
めめは俺の言葉を聞いて、少し目を見開いたあと、安心したように微笑む。
はああっと、息を吐き出して、よかった、とめめはポツリ呟いた。
「なあ、俺こっちもらってええ？」
「いいけど…、じゃあ俺は康二の”Ｋ”？」
「うん、寂しくなっても、これ見てめめのこと思い出せるように」
「……そう、」
”Ｒ”のほうをぎゅうと握って、”Ｋ”のほうをめめに渡す。
めめはそれを受け取ると指先で優しく撫でて、
「俺も、寂しくなったらこれ見てこーじのこと思い出すね」
目尻をきゅっと下げて少し微笑んだ。
その表情になぜか少し、
少しだけ俺は、寂しいような気持ちになった。
「一生の宝物、家宝にする」
これがあれば、例えめめがいなくたって、頑張れるような気がした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1621人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーー - 最後の想いを伝え合う所は大泣きしながら読んでました….素敵な作品をありがとうございました！！！！ (2022年9月11日 10時) (
レス) @page49 id: 9699c6dae8 (このIDを非表示/違反報告)
まぁー(プロフ) - 1話を読み始めてから、あまりの面白さに一気に最後まで読み進めてしまいました。後半の二人のやり取りは、あまりの切なさに泣きながら読んでました。素敵なお話をありがとうございました。 (2022年6月29日 21時) (レス) @page49 id: ca44044983 (このIDを非表示/違反報告)
らゆこ(プロフ) - みー☆さん» みーさん！コメントありがとうございます（ ; ; ）励みになります、物語の展開も更新もゆっくりですが今後もよろしくお願いいたします（ ; ; ） (2020年8月15日 0時) (レス) id: 330379d7ee (このIDを非表示/違反報告)
みー☆(プロフ) - 私と同じお名前の方がいらしたので☆をつけてみました(*^^*)！もちろん私も更新楽しみにしておりました！物語が動いてきてドキドキしてます(*´ｪ｀*)！ (2020年8月14日 18時) (レス) id: 67ba1ad69d (このIDを非表示/違反報告)
らゆこ(プロフ) - みーさん» みーさんいつもコメントありがとうございます！とても励みになってます（ ; ; ） (2020年8月13日 10時) (レス) id: 330379d7ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らゆこ | 作者ホームページ：
作成日時：2020年4月11日 20時
