例えばそう、君だったりして

その声が(Tkat) ページ21

At side


そろそろ夕飯の時間だけど今日は何にしようか。 パソコンの画面に写っている時間を見てリビングに移動する。

「ねえ、なんか食べたいのある？」

扉越しに部屋にいるたかこうに声を掛ければ直ぐに出てきて、あっとが作ってくれるなら何でも、とソファに腰掛けた。

「お前それ1番困るやつだって言ってんじゃん」
「だってあっとのご飯、大体美味しいんだもん」

うるせえそんなに相好を崩すな。

「じゃあ適当に作るから文句言うなよ」
「もちろん、てか僕も一緒に料理するよ？」
「いや、キッチン狭いからいい」

2人で隣に立って料理も良いかも知れないが、残念ながらそんなスペースはない。

「じゃあ待ってるね、あっと」
「うい」

冷蔵庫の中を見て食料を確認する。何作ろ、チャーハンとかでいいか。しっかりと2人分キッチンの上に並べて野菜から調理を始める。

「ねえねえあっと」
ひょこ、とリビングからこちらに顔を出す。

「ん？ なんかリクエストあんなら早めに言えよ」
「それは特にない！...けどえっと...ねえあっと」
「だからなんだよめんどくせえ、こっちは料理してんの」
「あははっ、ごめん怒んないで笑 」

にぱっと屈託のない笑みを浮かべるものだから、思わずこちらもつられてしまいそうになる。

「たくお前は何がしたいんだよ」

誤魔化すように目線を下に向けて料理に集中するふりをした。

「んー？ なんか、僕ってあっとのことたくさん呼ぶじゃん」

...確かにな。

「でもあっとって僕のことそんなに呼んでくれなくない？」

たかこうの姿を見ていなくても、その目が期待で輝いていること位は容易に想像が着く。呼んで欲しいらしい、たかこうの事を。

「んな餓鬼みてぇな事言ってんなよ」

名前を呼んで、呼ばれてって中学生のカップルじゃあるまいし。...何より気恥しいが過ぎるだろ、待て、俺が呼ぶまでずっと見てるつもりか？

「ねーえ、あっとー」
「あーめんどくせえ、たかこう、俺は今料理してんの」

これで良いだろ、と半ば唸るように言い放ち手元に集中する。けど一向に目の前から退く気配がなく、再び耐えかねてたかこうの方を見やると嬉しい、を体現したかのような顔を作った。

「やっぱりあっとに呼ばれるの大好き」
「......で？」
「もっと沢山僕のこと呼んで欲しいな」


「...ま、気が向けば」

fin

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