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目黒を見送り、
玄関で靴を脱いでるときに
ﾋﾟｺﾝ、と通知音。
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リビングへ行き
スマホを確認すれば
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“ 照先輩 ”
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その数年振りの名前に
一瞬指が止まる。
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「照先輩...」
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洋服を脱ぐのも忘れ
立ったまま通知を押した。
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岩本【遅くにごめん。岩本です】 23:00
【お久しぶりです】23:03
岩本【寝てた？】23:04
【大丈夫です】23:05
岩本【深澤から来週うち来るって言われて思わず連絡しちゃった】23:06
【わざわざすみません】23:07
岩本【なんかかたくね？久しぶりだから？】23:08
【かたいですか？】23:09
岩本【Aさ、まだ寝ない？】23:10
岩本【良ければ、電話しない？】23:10
【少しなら...】23:15
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少し時間が空いた返信に
パッと既読が付くと
すぐさま電話がかかってきた。
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すぅ...と
息を吐き...
ﾄﾝ...と通話ボタンを押す。
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岩本「...もしもし」
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聞き間違えのない、
低くて、変わらない声。
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「もしもし」
岩本「久しぶり」
「お久しぶりです」
岩本「ごめんな、寝るところだった？」
「...いえ、まだ」
岩本「そっか。最近はどう？」
「ずっと同じですよ」
岩本「深澤にいじめられたりしてない？」
「まさか(笑)」
岩本「あ、笑った」
「そりゃ私だって笑います」
岩本「なんか、俺嫌われたかなと思って」
「...どうしてそう思うんですか？」
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少し黙った照先輩は
「何となく？」
と答えた。
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「...ずるい」
岩本「...ごめん」
「謝るのはもっとずるい」
岩本「...」
「らしくないですよ、そんなの」
岩本「悪かったなと思って」
「...」
岩本「何も連絡しないで会うのはお互い嫌かなと思って」
「そう...ですね」
岩本「急にごめんな」
「大丈夫です」
岩本「じゃあ来週待ってるから、気を付けて」
「はい。ありがとうございます」
岩本「おやすみ」
「おやすみなさい...」
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先に切られた電話。
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私は、
まだ耳に残る声の感触に
深く息を吐いて
スマホをテーブルへ置くと
お風呂へ向かった。
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作者名：yuri | 作成日時：2022年8月4日 1時
