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目の前には俺の背より少し小さい白い縦長の看板

入学式



そのふてぶてしい字はまるでここにいると全面に主張しているようにも見えた。

いやあんまり気が乗らないから今の俺には図々しく見えたのかもしれない



「れおー!写真とってもらおうよ」



後ろからはさっきからチョロチョロ動き回っていたかーちゃんの姿が。
どうやら俺と二人で写真が撮りたいがために走り回っていたらしい


拒否ろうと一瞬思ったけどさすがに悪いなと思ってコクっと頷いてみせた

やったっと嬉しそうな顔をするかーちゃん。
異常な程のテンションに驚いたけどそれとなく察して俺もかーちゃんに微笑んで見せた

きっと周りが家族連れできていることに対して俺に気を使っているんだ


「じゃあ申し訳ないんですがお願いします。」

「いえいえ。」



少し遠くで撮ってくれるらしき人、にこうお礼を言っていた
騒がしくてあんまり聞こえなかったけどこういう小さなかーちゃんの気遣いとか頑張りとか、

見てて少しジンときた



「よし。何枚とってもらおう。かわいくとってくれるかなあ」

「何枚とっても同じだっつの」


うちのかーちゃんは周りの親より若干若いせいもあってまるで同級生のようなノリで接してくる

やっぱ思春期男子だし今の気持ちを悟られたくないって思ってたからかーちゃん特有の
ノリにこの日ばかりは感謝した

「じゃあいきますよー」


チラッととなりを見た
相変わらずの笑顔でスタンバイオーケーと顔でしっかり伝えていた

俺も前を見た


メガネをかけたすこしふくよかなおじさん
人当たりがよさそうでなにより笑顔が素敵なおじさんだった

これだったら顔に作ってる感とか出ないで済む

ナイス善人
と心の中でつぶやきながらレンズを見た


「さん、にいーー、、」



もう冬じゃないんだ




唐突に。

変わりゆく空の色の中。




なぜかすんごい妙なタイミングで妙に腑に落ちる実感を覚えた

不思議だ
なんども幻想からぬけることができずひたすらに縛りつけられていた、、はずなのに


「、、い、いち、、」


戸惑いながらもシャッターを押すおじさん



なにか瞳に違和感を覚えて触れようとした時雫がひとつ。
頰に流れていくのが直に伝わっていく


A春がきたよ。



空を見た

見つかるかもしれないと思ったけどやっぱりいなかった

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作者名:あい | 作成日時:2017年10月8日 23時

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