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｢はーい、もしもし？｣
虫｢あ、A？家ついた？｣
｢うん、ついたよ？どうしたの？｣
虫｢ううん、ちょっと心配で｣
｢もうー、頭縫っただけで済んだし大丈夫だって｣
虫｢そうじゃなくて、｣
｢え？｣
そういうと、少し間をとって
虫｢心の方、傷ついてない？｣
｢…｣
別に傷ついてない訳じゃない
例え事情があっても、やっぱりなんか悲しかったし
もし今後付き合ってもそうやって事情があれば女の人と…なんて思う
虫｢てつやに、ちゃんと何が嫌って伝えた？｣
｢嫌、っていうかあんな所出くわしたら普通にてっちゃんのこと信じられないとは、いったよ？｣
虫｢そっか、じゃあ良かった｣
｢なんで？｣
虫｢A、すぐ抱え込むから嫌なことでも何も言わずに自分の中でどうにかしようとするでしょ、手術室から出てきた時見てたから、泣いてるの｣
誰にもバレてないと思ってた
てっちゃんを見たら、フラッシュバックして心が苦しくて、少しだけ泣いちゃったとこ
｢ほんと虫さんって、よく見てる｣
虫｢ハハ、そりゃAの事ちゃんと守るって約束したもんね｣
それはいつかの車の中で話したこと
｢ありがとう｣
虫｢A、僕に辛い顔しちゃいけないって言ったでしょ？だから僕も言う。絶対幸せになるんだよ、じゃないと怒るからね｣
｢えぇ、虫さんに怒られるのは怖いなぁ｣
｢でも、ありがとう、私もちゃんと幸せになる…てつやと｣
虫｢え？｣
｢私ね、最近ずっと何をしてても頭からてっちゃんが離れない。ずっとずっと、笑った顔も、声も、全部｣
虫｢…それをAは好きって言うの？｣
｢うん、好きじゃない人の事は絶対こんなに思い返さないから、私やっとちゃんと取り戻せた、高校時代から失ってた、ほんとに好きって言う感情｣
虫｢そっか、なら良かった｣
｢虫さんも、早く好きな人見つけなね｣
虫｢…ダメかな｣
聞こえるか聞こえないかくらいの声
｢ん？｣
虫｢叶わなくていい、叶わなくていいからもう少しだけ好きでいさせて欲しい｣
｢…｣
虫｢ごめん、あの時僕から言ったのに、でもやっぱりAが好き｣
虫｢だけどね、付き合えないから、だからせめてちゃんとてつやと結ばれる所までは好きでいさせて欲しいんだ、僕からAを諦めることなんて出来ないから｣
｢たいき…｣
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作者名：矢橋 | 作成日時：2020年6月2日 19時
