episode11 ページ11
それから昼食の時間になり、誰もいない屋上で私と夕、小瀧さんの三人でご飯を食べる。
違和感のあるこの状況に私はずっと顔を伏せていた。
チラッと顔をあげれば、にんまり薄気味悪い笑みを浮かべた二人が私を見つめている。
咄嗟に視線をお弁当の方に戻して、何も見なかったかのように卵焼きを口に運ぶ。
「のんちゃん、Aが永瀬先輩のこと好きなんやって」
「えー、ほんまぁ？そら、俺ら協力せなあかんなぁ！」
やっと喋り始めたかと思えば、下手な子芝居を繰り広げている。
小瀧さんはやったるで、と制服の袖を捲る。
「協力っつっても俺何していいかわかんね」
「いや貴方恋愛マスターって呼ばれてるんですよね？」
頼りない発言に思わずツッコミをいれてしまう。
小瀧さんは反省する素振りすら見せずに、“今のええツッコミやなぁ！”と楽しそうにしている。
「ちょっとのんちゃん、真面目にやってや？」
「おーすまんすまん、キレのあるツッコミやったからさー」
「ありがとうございます……？というか、そんなことはどうでもよくてですね、」
「わかっとるよ。廉ともっと距離縮めたいんやろ？」
「なら早く話を進めましょうよ」
急にキリッとした決め顔を向ける小瀧さん。
この人、本当に協力しようとしてくれているのだろうか。
「んー、せやなぁ。じゃあ、まずは二人でどっか出掛けてみたらええんちゃう？」
「どっかって……例えば、どこですか？」
「最初のうちはあれやな、あんまし遠くには行かん方がええかも」
それらしいアドバイスをくれる小瀧さんに少し安心した。
予鈴を告げるチャイムが鳴っていたことにさえ気付かず、私たちは夢中で話し込んでいた。
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作者名：も。 | 作成日時：2019年9月20日 0時
