その無自覚、どないかならん？―FINAL―【稲荷崎】

君の好きなところ ページ4

北「…何ていうか、俺は思ってたよりも単純やったみたいや」

『！
え、どういう…』



北の言葉にAが顔をあげる

不思議そうな顔をするAに
北が微笑みかけた



北「俺な、出会った次の日に告白されたんも、それに加えてこれでもかってほどアプローチされたんも初めてで、正直最初は戸惑っとったんやで」

『うっ、す、すみません』

北「ん？別に怒っとらんけど」



肩をすくめるAに北が首をかしげる



北「今思えば、最初はただの母性みたいなもんやったと思うわ」


『母性…？』


北「おん

初めて会ったときのAは傷だらけで、性格も今と比べたらめっちゃツンツントゲトゲしとった」


『ツンツン…？？』



北の独特な物言いに
Aが目を点にする



北「そんな一匹狼みたいなやつが自分にだけめっちゃ懐いてくれたら嬉しなるもんやん？

ほんで自分に懐いてくれとる子が、危なっかしくて、手のかかるやつで、目ぇ離したらまたケンカしてボロボロになるようなやつやと思ったら、どうしてもほっとかれへんかった」


『あぁ、それであんなに私に構って…』



Aが納得したように頷く



北「まあ、せやな

ほんでそしたら突然それが寄ってこーへんくなった挙げ句、俺のこと好きやなかったみたいやとか言うねんもん

自覚なかったけど、あのときは自分でもビックリするくらいめちゃめちゃショックやったみたいやわ」



はは、という北の笑い声が空気に溶ける



北「そんで、そんなもやもやした気持ちのまんま、バレー部で夏祭りいくことなった

俺から離れたことで髪染め直したお前は
なんかイキイキしとって、キラキラしとったから、たぶん、無意識に、お前のこと目で追ってたんやと思う

せやからあのとき、はぐれかけてんのに気づいて探し出せたんやと思うわ



そんで、昨日も言ったけど
花火みて子どもみたいにはしゃいで笑うAが、ほんまに眩しくて、綺麗で



あの日…実はな、キスしそうになったんやで」


『！！』



照れくさそうに笑う北の正面で
Aが顔を真っ赤に染める



北「俺は生憎恋愛に疎いから
そんときには自分の気持ちに気づかんかったし、そんな衝動なかったことにした

そんなときに、まあ、俺の勘違いやったけど、Aと侑が付き合ってるって知って、それでめっちゃもやもやして、心臓いたくて、俺としたことが寝られへんようにまでなって…



保健室で俺のために泣いて、笑ってくれたお前みて、ようやっと気づいたんや」

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