その無自覚、どないかならん？２【稲荷崎】

父親から主将へ２ ページ48

一将「あ、それから
Aと侑がケンカしたこともあったみたいですね

その話について電話したとき、あの子、ないとったんです」

北「！！」



一将の言葉に、北が肩を跳ねさせる



一将「でも、Aには申し訳ないけど、俺はあの時ほっとしたんです」

北「えっ」



そして、予想外の言葉に目を丸くした



一将「ああ、Aが泣いてる、って、ほっとしたんです
喜怒哀楽がよう表に出るようになったんやなあって…
前までは悲しくても圧し殺すことが多かったんですよ

ちゃんとこの子も自分のそういう気持ちに正直になれてきてるんやって、昔のAを思い出して嬉しなりました」



一将が窓の外を遠くを見つめる目でみた



一将「…Aから、寂しいって言葉は聴いたことないんです」

北「！」

一将「実父に置いていかれて、全然会えんくて
寂しないわけないんですけど、俺のことを困らせないように我慢してるんだと思います」



一将が北に向きなおる



一将「北くん、あの子は周りが思ってるより強くないです
ケンカは強くても、心はそんなに強くない

普通の女の子なんです
人並みに悲しむし、喜ぶし、寂しがる

ただちょっと、
弱さを見せるのが苦手なだけなんです」

北「…そうですね、そう思います」



北が静かに同意した



一将「…自分勝手やって、責任放棄やって言われるかもやけど、北くん」



一将が
深々と頭を下げた



一将「うちの娘のこと、どうかよろしくお願いします
あの子のこと、これからもバレー部の一員として、仲間として、大切にしたってください

…お願いします」









『あ！お父さん！北さん！』

尾白「お、来たか！おーい！こっちやー！
もう電車来るでー！！」



駅に現れた二人にAとアランが手をふった

間に合うか心配していた部員たちがほっとした顔を見せる



『お父さん、北さんと何話しとったん？』

一将「んー、内緒」

『ええ！？なんで！？』



一将が人差し指を口許にもってきて「しー」といった




赤木「北ー！電車きおったでー！」



遠くの方で赤木が叫ぶ



北「わかった！そっちいく！
…では、失礼します一将さん
Aも間に合うように乗りや」

『え、はい！』



北は赤木に返事をして、親子二人の時間を邪魔するまいと駆けていった



一将「ふ、気のきく主将やね」

『人間できすぎて怖いわ…』

一将「…A」

『ん？』



一将がAの名前を呼ぶ
そして、ふり返ったAに優しく笑った

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