その無自覚、どないかならん？２【稲荷崎】

おまじない ページ23

Aside



『うぐ、げっほ、ま、まにあった…』



あの後、曲がり角に注意しながらまた全力で走って、何とか試合に間に合った

戻ると、ちょうど公式練習が終わってボールを回収しているところだった



侑「何でそんな息切れしてんねん」



ぜぇぜぇと言いながらベンチに座る私を見て、侑が声をかけてくる



『ちょ、ちょっとシャーペンをウォータークーラーのとこに取りに行って…』

侑「はあ？変なとこ抜けとんなあ」

『ご、ごめん…』



その侑が整列に行こうとして、背を向けた

なんとなく寂しくなって侑の名前を呼んだ



『侑！』



私の呼びかけにふり返る侑に、拳をつき出す



『…頑張ってな』

侑「！！
ふ、任しとき！」



遠くで、侑も拳をつき出した

すると今度は治がこちらにぴょこぴょこと寄ってくる



治「A〜…」



珍しい、甘えるような声



治「おまじないして」

『え、おまじない？
そんなん知らんねんけど
何かバレーボールで定番のもんがあんの？』

治「いやそんなんはないけど。
…ツムだけ、ずるいやん」

『！』



恥ずかしそうに目を伏せた、いつもはクールな幼馴染の宮治が同級生とは思えないほど可愛らしくみえた



『…ふ、ふふ、かわえーなー治は！』

治「うわ、ちょ、髪ぼさぼさなるやろ」



そんな治が愛しくて、立ち上がって頭をわしゃわしゃと撫でる

おまじないは何がええかと思ったとき、
その治のおでこが視界にはいった


ちょっと恥ずかしいけど、
これぐらしいか思いつかん



『…………ﾁｭ』

治「！！」



小さなリップ音が鳴った

稲荷崎高校の応援席がどよめく

他の部員のみんなも、相手校も、それを見ていた全員が目を丸くしたり騒いだりしたことで、私はとんでもないことをしたことを自覚した

忘れがちだが、うちの幼馴染二人…いや、うちのバレー部のみんなはとても人気だ


目の前の治は、おでこを押さえて真っ赤な顔をしていた



『あー…嫌、やった？』



おそるおそる聞いてみる

すると治は間髪入れず頭をぶんぶんと横に振って、照れくさそうに笑った



治「ありがとう
なんやめっちゃいける気がするわ」

『そ、そうか』



治も背を向けて整列に向かう



治「あ、せやA」



治が何か思い出したようにふり返った



『？』

治「俺はさ、Aのバレーボールへの気持ちは、ほんまやと思うで」

バレーボール→←食パンはくわえてないし転校生でもないけど

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