その無自覚、どないかならん？２【稲荷崎】

咲いたのは、３ ページ16

北「綺麗やったなあ、花火」

『そ、ソウデスネ』



最後の花火があがった後

北がそう言って軽く伸びをした


その横のAは冷や汗をかきながら、片言で返事をする

動きも表情も固く、はっきり言って不自然だった



『(北さんが私にキスなんかするわけないのに何を思っとんねんアホちゃうか私！！！！)』



それもこれも、先ほどの北の行動を勘違いして動揺した自分を戒めているためだった



北「ほな、予定通り鳥居まで行こか」

『あ、はい！』



あまりにもいつも通りの北に触発されて、Aもいつも通りに返事をする

その返事ができたことで自分に一安心したAに、北が爆弾を投下した



北「ん」

『えっ』



Aの目の前に差し出された左手



北「繋がな、はぐれるやろ」

『っ…ぅぇ、でも、ぅわ！』

北「ほら、はよ帰んで」



北の左手をとるか悩んだAの右手を、北が自らとって、Aのことを引き寄せた



『(手、あつい)』



Aは自分の鼓動が速くなるのを感じた



北「あ、そうや」



北が歩きながらふり向く

Aは首をかしげた



北「言えてなかったけど、俺もその髪、よう似合ってると思うで」

『！』

北「お祭りの光に反射して、なんやめっちゃまぶしいわ

まぶしい思うんも、黒髪のときより今のそのキラキラした髪の自分の方が、イキイキして見えるからかもやけど」



北が笑った


まだそこら中に残る祭りの光が煌めくなか

無邪気に笑った



ﾄﾞｯ…



という音が、誰にも気づかれずに音をたてた

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