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私の細やかな幸せな日々はのんびりゆったりと続いた。
私の日常の中に、“深澤辰哉”という人間がナチュラルに溶け込んでいることが、不思議で、でも当然のようで。

そんな惚気気味な私は結局、“恋”をテーマにしても何処かうまく書けないなら、“愛”をテーマにした作品を描いてみたいという思いから、ホッコリゆったりするような脚本を書き終えた。
駄作といえば駄作だし、自分でも気に入らない点がいくつかあるけれど、自分の中の“愛”をたっぷり詰め込んだ、純粋無垢な作品が出来上がった。この世の汚れなど何も知らないとでも言いたげな、真っ白な作品。

そんな真っ白な原稿を茶封筒に包み、震える手で制作会社の住所を書いた。

あとで、ポストに投函しよう。
と心の中で呟き、バッグに仕舞い込んで仕事に向かった。






今日の仕事の帰り、今日は深澤さんが外で待っていた。
この間、「Aちゃんが好き」と告白されてから始めて会うものだから、少しドキドキしたけれど、

「おっ、おつかれ〜」

と深澤さんはスマホから顔をふっと上げて笑いかけてくれて、それだけで肩の力が抜けた。

「深澤さんも仕事お疲れ様です。今日も来てくれてありがとうございます」
「うん、全然だいじょーぶ」

深澤さんは今日はメガネはかけていなかった。
いつもより少しクッキリと大きい瞳で私をじっとみて、「顔がよく見えない。メガネ付けてくりゃよかった」と呟いた。
あまりにもまじまじと見つめられるものだから、どうしようと目を逸らせば、いつも通りきゅっと手を握られる。

「あ、封筒」

ドキドキしてる私を差し置いて、深澤さんは私の封筒を指さして言った。

「ん?あぁ、これは見えるんですね」
「うん。流石に大きいもん」
「たしかに。そっか」
「できたの?脚本」
「はい。納得はいってないけれど愛着が湧いてしまって、添削出来なかったんです。だからもう投函しちゃえ!って思って」
「あはは!いいじゃん。そう。そんくらいの力の抜き方でいいのよ」
「ですよね。結果はどうであれ、書いていて楽しかった」
「…そう」
「はい」

初めての恋愛に、初めての脚本、初めてのテーマ。
楽しくないわけが無かった。
そんな私をみて深澤さんは何故か自分のことのように楽しそうに笑って、「俺にも読ませてよ」と茶封筒を取ろうとするから、「やめてください!」と手を払い除けた。

深澤さんから教わったこの胸のドキドキを存分に落とし込んだこの脚本、見られて恥ずかしいに決まってる。

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name - 2個のコメントを書いた者です。2個のコメントを消していただきたいです。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。 (2023年2月21日 23時) (レス) @page10 id: 06057a0d21 (このIDを非表示/違反報告)
name - (続き)お忙しいと思いますが、よろしくおねがいします! (2022年12月11日 0時) (レス) id: 22bcb9612f (このIDを非表示/違反報告)
name - はじめまして!素敵な作品なので感動してます!minmin様の他の作品が読みたいので@snmn_minminを検索したのですが、見つかりませんでした!こちらの機械の不具合かもしれないのですが、アカウントの探し方を教えてほしいです! (2022年12月10日 23時) (レス) @page10 id: 22bcb9612f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:minmin | 作成日時:2022年5月24日 19時

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