8-晩御飯(夢主) ページ9
*
「いただきます。」
「いっただっきまーす！」
私達は鍋を囲んで手を合わせた。
炒飯と迷っていたが、複数で食べるならやはりこれだろう。
「嶺二……、その、さっき言いかけたのって……」
「さっき……？…あぁ、あれ？
……ぼくは、これからどうすればいいんだろう、って…言おうとしてたんだ。
でも……こうして、君の作った鍋を囲んで、お腹が満たされて…思ったよ。ぼくは、ぼくに出来ることをしよう、って。
まずは、帰るための手掛かりを見つけないとね。それには、君にも協力してもらわなきゃいけない」
「…協力…？」
「そう。協力。ぼくも、自分で出来る限り調べるけど、この世界のことはこの世界の人間である君が一番よく知っているはずだ。
それに…この世界でのぼくのことも、きっと君はよく知っている。だから、それを教えて欲しいんだ。
…それと…しばらくはここでお世話になるから、よろしくね。」
「…ええええええええ！？！？」
「ぼくのいた世界ならぼくの自宅があるはずだけど、そうじゃないなら行くところがないし…財布が無いから、お金もないし……放り出されたら、ぼくちん、困っちゃう……」
上目遣いで目をうるうるさせながら、嶺二が私を見つめる。
くっ………あざとい。
でも…確かに、今、嶺二は知り合いもいない、誰にも頼ることが出来ない状態にある。ここで家から追い出したら、それこそ、どうなるかわかったもんじゃない。
それに…もし、嶺二を知っている人に見つかってしまったら、すごくややこしいことになりそうだ。
そうだ、決してこれは、私が嶺二と一緒にいたいからじゃない。本人だってそう言っている。
だから、何も後ろめたいことはない。
…そう自分に言い聞かせ、私は静かに頷いた。
「………わかった」
「ふふっ、ありがと♪︎」
嶺二は嬉しそうににっこりと笑った。
…ぴょこんと動く動物の耳が見えそうだ。
だからなんでいちいちお前は可愛いんだよ…！！！アラサーのくせに…！！！
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作者名：レナ | 作成日時：2020年5月1日 11時
