12-お願い(嶺二) ページ13
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「…嶺二、あの時、起きてたでしょ」
「ギクッ」
「ギクッ、じゃねえし。そんなこと口で言うやついないから。
……知ってるから。嶺二があんまり寝ないこと」
「……あはは、そうだよね、君はぼくのこと、なんでも知ってるんだもんね」
「……なんでも、って言うわけじゃないけど……
とにかく、その……眠るのが怖いのはわかるけど…、…嶺二の、せいじゃないし…色々タイミングが、悪かっただけだし……だから、そんなに自分を責めないで、っていうか……」
「……Aちゃん……」
「だから!ちゃんと寝て!!睡眠時間大事!!」
「う、うん…。わかった。努力はするよ」
「あと……私の前では、あんまり……道化を演じたり、しないで……」
「……え?」
「周りの人が笑顔になるためなのは分かってるけど、それでも…自分を押し殺して、道化を演じてる嶺二を見ると、私はすごく、悲しくて、苦しくて…イライラして、殴りたくなって…」
「…う、うん?後半おかしくない?」
「…だから、殴られたくなかったら、自分に素直でいて」
「う、うーん…?でもまあ、割と癖になっちゃってる部分もあるし…」
「それでも、だよ…。きっと…嶺二は演じるのが上手だから、私はそれに気づけない…。そうなったら、悲しいから…」
「…、そっか。わかったよ。なるべく、そうするね」
…少し、だけど、心が軽くなった。
会ってそんなに経ってないのに、ぼくのことを全部知ってる、不思議なこの娘の言葉に。
自分を偽る必要は無いんだと、ぼくが全て悪いわけじゃなんじゃないんだと。
その言葉に、少し救われた気がした。
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作者名:レナ | 作成日時:2020年5月1日 11時