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新しい未来 ページ3

「僕から離れないで。それと、声は出さないこと。」


狐鉄さんは森の入り口まで来ると、それだけ言って右の手のひらを地面に水平に上げ、口元に近づけてふうっと息を吹いた。


「…」


私が森から出てきた時のように風が吹き抜け、狐鉄さんは何も言わずに歩き始めた。


言われた通り無言でついてゆくと、狐鉄さんは急に足を止めた。


「おかえりー。」


「…蘇芳狐、うちに戻ってなかったの」


そこには、私が今朝座っていた岩に腰掛けて足を組む女の子の姿。
リンによく似てるけど…雰囲気が姉御って感じ。


「かわいい弟が怪我してるのに無視して帰れると思う?」

蘇芳狐という狐らしい彼女は、ぴょんとはねて地面に降りる。
どうやら私達が見えていないらしい。狐鉄さんのおかげかな?


「だれのせいで…」

「貴方のせいよ。」

蘇芳狐さんは狐鉄さんの尻尾を無理矢理掴んで引き寄せる。


「っ…なんで蘇芳狐はっ…そんなに人を嫌うのっ」


「人は好きだよ?でも人と狐は会っちゃいけないの。」

蘇芳狐さんは笑顔の奥に悲しみの色を浮かべる。


「昔仲良くしていた女の子がいたけどね、一族の人が無理矢理引き離した。私がこの森に行くことを、彼らは許さなかった。…私はね、あんな悲しいこと、狐鉄に起こって欲しくないのよ。だから…」

「っ…!」

蘇芳狐さんは狐鉄さんの傷口をぐりっと押して…


「この人間達をどうにかしなくちゃいけないの。」


1番近くにいた見えないはずのミクオの胸ぐらを掴んだ。

その瞬間、私達全員の体が見えるものに変わる。

「やめてっ…!」


1番最初に動いたのはリンで、蘇芳狐さんの腕を掴んで涙を流している。

私とレンは狐鉄さんに駆け寄り、狐鉄さんは「大丈夫。」と私達を見た。

「蘇芳狐ちゃんっ…!どうしちゃったのっ…?!昔はもっと優しくてっ…いいこだったのにっ…!!」

リンはすがりつくように、小さく泣き叫ぶ。

「…!!貴方…」

蘇芳狐さんは急に手を離して、ミクオは少し咳き込んだ。


「どうして…?」


「蘇芳狐ちゃんに会いにきたんだよっ…!ずっと会いたかったのっ…!」

蘇芳狐さんはそんなリンを目にして、へなへなとその場に座り込んだ。


「…これじゃ…言い訳できないじゃない…」


「…理由なんていらないから…。元の蘇芳狐ちゃんに戻って…?」


蘇芳狐さんは下を向いてしまう。
その綺麗な髪の裏で、透明な雫が雪に落ちて溶けた。

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設定タグ:鏡音レン , 夢小説 , VOCALOID   
作品ジャンル:アニメ, オリジナル作品
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うぶめ - レンくん大好き!!続きも頑張ってください!! (2016年2月19日 17時) (レス) id: cb793dd2ae (このIDを非表示/違反報告)
桃羽 - す、すごい泣きそう... (2015年6月10日 3時) (レス) id: 295490268f (このIDを非表示/違反報告)
- あ (2014年10月2日 19時) (レス) id: 23aa123a0b (このIDを非表示/違反報告)
- あ (2014年10月2日 19時) (レス) id: 23aa123a0b (このIDを非表示/違反報告)
咲音サクラ(プロフ) - ぞ・・・続編?!楽しみです〜もちろん続編もお気に入りに追加ぁぁx!!! (2012年9月10日 18時) (レス) id: 03c04325e6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆう( ´・ω・` ) | 作成日時:2012年8月18日 18時

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