寂しくなるのは【iw×mm】 (ページ31)

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全てを包み込むような、優しくて暖かい声が聞こえる。

kj「めめ、俺はめめに幸せになって欲しいんよ。幸せになることを───

─────諦めて欲しくないんや。」

握られた手に、より強く力が込められるのが分かった。

...康二は俺の過去をほぼ全部知っていて、多分俺よりも俺のことを理解してくれてるんだと思う。

学校終わりの薄暗い公園で腰掛けながら、否定も肯定もせず、黙って俺の背中を擦りながらただただ話を聞いてくれた彼はやっぱりどこまでも優しい。

もしかしたら終わるかもしれない関係に怯えていて、深い仲になるのが怖くて一線を引こうとしていることも。全部全部知ってて、それでもいつも俺の腕をとって引いてくれる。

明るい、優しい光の方へと。

公園で話した日以来、康二の方から詳しく聞いてくることも、そのことを話題に出すこともなかったけど、その優しさに俺はいつも救われていた。

けど、それでも信頼はいとも簡単に無くなるものなのだということもわかってる。これだけ与えられても俺は、まだ過去に、自分に、そしてまだ何が起こるかもわかっていない未来にさえも怯えてる。なんの確証も持てない、そんなふわふわと浮ついた運や偶然、勘に俺は身を任せきれないから。

今俺の周りにいる人達は裏切ったりしない、そんなことはわかってる。でもやっぱり怖いし、もしかしてもの想像の中でさえも嫌われるのは嫌だ。

初めから全部なければよかったと、何度思ったことか。

この髪の毛だって、昔母親に食器を投げられ、眉毛辺りを切ってしまい傷ができてしまったから伸ばしているだけ。結局どこまで行っても隠したいだけ、隠れたいだけ逃げたいだけなんだ。

中学時代、言い寄ってくる女の人は沢山いて、関係を持ったとこだって幾度となくあった。けど、誰も好きになんてならなかった。身体中にある痣に皆気持ち悪いと吐き捨てて俺を置いていく。

けど俺は付き合う準備もしてないくせに離れる準備だけはいつも完璧だったから、泣いたことも、悲しいと思ったことすらない。

だから初めてだった。康二が、店長が、高校に
連れて行ってくれてる先生が...岩本くんが。

だから壊したくない、このままでいたい、嫌われたくない、拒絶されたくない、悲しませたくない。

そんな気持ちばかりが雫のようにぽたぽたと溢れて溜まっていく。どうしようもなく膨れ上がったこの愛しさを吐き出せなくて悩んでいるだなんて、なんて幸せな悩みなんだろうか。