寂しくなるのは【iw×mm】 (ページ28)

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今何言われた...？

何度も何度も再生し直してようやく最後の言葉までたどり着けば、思い出されるのは1つ

「...きす、するって言った.......？」

今度申し訳なさそうな顔したら、き、キスするって言ったよなあの人。え言ったよね！？！？

ぎゅーっと体温が急上昇して頭から湯気がでそうなほど体が火照る。

え、何、なんで？？？なんで言ったのそれ。え？ちょっと待って意味わかんない。

もう頭の中はパニック状態。本能なのか、考えようとしているのを脳が拒否し始めている。オーバーヒート寸前の頭にくらりと視界が揺れた。

全くもって意味がわからない。もう怖いんだけど。

そんなに遊んでるようには見えないけど、実は手馴れてたりするのかな、でも岩本くんモテるよな絶対...

とりあえずさっき聞いたことを無かったことにして、よたよたと歩きながらソファに勢いよくと腰掛けた。

「...うん、聞き間違えだな。」

「なにが？」

「っうおっ...！？」

声に反応して慌ててそちらを見れば、俺のスウェットを着た岩本くんがソファの背に腕を置き顔をのぞきこんできた。思わず反射で顔を後ろに仰け反らす。

はくはくとしか動かない口に固まる身体。

「で、何が聞き間違えだって？」

探るわけでもなくただの世間話みたいに聞いてくるその声に、上がっていた体温はすっと下がった。

そうだ、こんなに浮かれてるのは俺だけなんだよな。

そう思えばバカバカしく思えてきた。叶うはずない恋に足を浮かせてどうすんだ。

「──────なんでもないです。」

カチリと、7時を知らせる時計の音がした。

「...目黒さ、なんか怒ってる？」

結局熱は岩本くんのおかげで微熱まで下がったので、普通に登校することにした。隣にはもちろん一緒に家を出た岩本くん。

いつもなら嬉しくてバイトとか学校の話とか色々するけど、今日はどこか自分の中にどよんとした空気が流れていた。

原因は、ほとんど朝の出来事だけど。

残りはほんの少し残る微熱のせい、にしておく。

「怒ってるように見えます？」

「...どっちかっていうと落ち込んでる、って感じする。」

岩本くんは俺が調子悪い時にいつも、何故か何も言わなくても何かあったかと聞いてくれる。別に暗い雰囲気を出してるわけでは無いのに気づかれてしまうのは、彼の優しさ故か。

また期待してしまいそうになった頭を緩く振った。

いつもの俺にしては珍しく、この恋にもう弱気モードに入っていた。