寂しくなるのは【iw×mm】 (ページ19)

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#19 ページ19

ようやく声を出して答えた俺に岩本くんはまたふわりと微笑む。

「うん。でも今日は大丈夫。俺も、一緒に帰るから。飯も作ってやる。だから、帰ろ？」

1人じゃない。

それだけでさっきの冷たいのはどこかへいって、こくりとまた頷いた。岩本くんが一緒なら、寂しくないよね。

「かえる...」

返事に満足したのか岩本くんは頭を撫でていた手を頬に移して、親指でほっぺたを撫でた。

「じゃあ目黒、今向井が荷物取ってきてくれてるから、ここでもうちょっとまっててくれるか。」

「いわもとく、どこ、いくんですか...」

「ちょっとだけ行かないといけないとこあるから。3、40分したら戻ってくるし、そしたら帰ろう。」

働かない頭は岩本くんがどこかへ行ってしまうってことだけ読みとって、無くなったはずの寂しさがまたじわじわと込み上げてきた。俺は、頬を撫でてくれている岩本くんの裾を掴んだ。

「...ひとり、ですか...？いわもとくん、どっか、いっちゃうんですか...？」

岩本くんを見上げれば、びっくりした顔をして俺の事を見ていた。それから顔を逸らして反対の手で顔を覆う。なにか、ダメなことを言ったんだろうか。

奥で一部始終を全て見ていた薮先生の笑い声が聞こえ、こちらに来て俺の頭を撫でた。なんだか今日は撫でられてばかりだ。

「目黒は岩本が好きなんだなぁ〜。良かったな、後輩に好かれてるぞ岩本。」

「ちょ、まじでやめてください...」

なんの話しをしてるんだろうか。

理解していない俺に気づいたのか、薮先生は腰を落として俺と同じ目線になる。

「目黒、岩本絶対戻ってくるから、それまで先生と待っとこう。体、重いでしょ？とりあえずベッド行こう！岩本よろしく〜。」

「は...！？」

「もー先生も歳なのよ。ほらほら早く。目黒眠そうだよ〜？」

薮先生は鼻歌を歌いながら椅子に座った。

どうしたのかという意味を込めて岩本くんの袖を引けば、岩本くんは大きなため息をついて俺の背中と膝裏に手を入れた。

「へ...？」

「目黒、ベッドに運ぶぞ。」

そのまま軽々と持ち上げられる。岩本くんのお姫様抱っこは安定していて心地よかったのに、ベッドまでの距離が近いのですぐに降ろされた。布団をかけられてぽんっと頭を撫でられる。

「...じゃ、すぐ戻ってくるから、ちょっとまってて。」

「...はい、」

少し寂しさは残るけど、戻ってくるんだよね。そう思って返事をすれば岩本くんはまた優しく笑った。

彼は保健室を後にした。