寂しくなるのは【iw×mm】 (ページ17)

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結局3分の1ぐらいだけ食べて食器を流しに入れた。食べきれなかった米がシンクに流れるのを見て今度は胃にも不快感を覚えた俺は、口を噤み、ぐっと息をこらえた。

ここで吐いたら、食べた意味が無い。

冷蔵庫から冷たい水が入ったペットボトルを取り出して1口含み、ゆっくり飲み込んだ。

冷たいのが喉を通って胃に入り、吐き気は多少納まったような気がする。

不自然に火照る頬に動かない体と食べ物を受け付けない胃袋。どう考えても体調不良だけど、学費を払ってる以上行かないという選択肢はなかった。バイトだってある。迷惑をかけるわけにはいかない。

いつもだったら10分ぐらいで終わるご飯も、30分もかかってしまったけど今から準備すれば間に合う。

タイミングよく乾燥が終わった音がして、俺は自分の頬をパチリと叩いた。手先は死ぬほど冷たいのに、頬は信じられないほど熱い。

「....よし。」

俺は急いでふろ場に向かった。

結果から言えば学校には間に合った。

けど、康二に誤魔化しが効かないということが盲点だった。

「...めめなんできたん。」

先に教室にいた康二が俺の姿を見るやいなや眉間に皺を寄せ明らかな不満を声に出した。

「何が？」

「いや確実に熱あるやん。やすみぃや。」

「...大丈夫。」

そう言った後の康二のあの笑顔は忘れられない。背筋が凍り、冷たい汗が背中に流れたあの感覚...

普段優しい人に嘘をつくと怖いのだと改めて思い知らされた。

そういやこいつは俺が話をしただけで恋をしてるだのなんだの当ててきていたし、こんなあからさまな体調不良を誤魔化せる方が不思議か...

結局家に人もいないので迎えに来て貰えないし、帰ったところで看病する人もいない。そんな俺を見兼ねてか康二がHRの後に保健室まで俺を連行した。

保健室の先生の名前は薮先生と言うらしい。

高校に入学して初めて保健室にお世話になったので初めに自己紹介をされた。

今すぐ連れて帰るんやと言い切った康二に先生は首を振る。けど今日は先生も人数が少ないので連れて帰れないとのこと。

放課後までベッドの上で過ごすことになりそうだった時、

「すいません、北斗来てますか...って、目黒...？」

ばちりと目が合う。間違いなく、そこに居たのは岩本くんだった。

「おっ岩本〜。いんや？来てないよ？3年生今日補習なんだよね。」

薮先生はにこやかにそういった。どこかふわふわとした雰囲気を持つ先生の周りには花が散っている。