寂しくなるのは【iw×mm】 (ページ13)

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#13 ページ13

「うわ目黒天才じゃん。料理人なった方がいいぞマジで。」

「...ありがとうございます。」

グツグツと煮えている鍋を味見した岩本くんは目をキラキラと輝かした。

...笑う時にクシャッとなる目尻といい、今みたいな少年のような目といい、岩本くんにはギャップが多すぎる。

その全部にドキドキしている俺も、結構だとは思うけど。

「んじゃ持って行くぞ。目黒皿とコップ持ってきて。あと箸。」

「はーい。」

出会って2週間、連絡先を交換してからわずか数時間、数える程しか会話を交わしていないのに俺と岩本くんはもう打ち解けていた。何となく心地いいのはなんでだろうか。

そもそも彼が俺を家に招いたのは、せっかく連絡先交換したんだから仲良くなりたいと思った、ということだそう。連絡先を知っている人は少ないので俺はその希少な存在だったんだとか。

そういうところがなんか可愛い。てか俺にかわいいかわいい言うけど絶対岩本くんの方が可愛いよね。ガタイは結構いいけど...

「...目黒？」

「っはいなんですか？」

「いや、なんですかは俺のセリフなんだけど...なに、俺の顔じっと見て。なんかついてる？」

無意識に岩本くんを見ていたらしく、慌てて視線を鍋に移した。

「なんでもないです、食べましょう鍋。」

「...そうだな、いただきます。うわうまそ。」

「.....いただきます。」

岩本くんは鍋の具を準備しすぎたと心配していたけれど、2人ならこの量も余裕かもしれない。ちょこちょこ2人で世間話をしてわかったのは、岩本くんは筋トレが趣味でチョコが大好きだということ。ダンスもかじってるらしい。いつも一緒にいるのは深澤先輩、宮舘先輩、佐久間先輩、渡辺先輩、阿部先輩の5人。全員個性的で中学からずっと一緒だと楽しそうに話していた。

俺は1人で出てきて友達がおらず、一緒にいた康二が唯一のなんでも話せる友達であることを話した。

「ご両親は？よく高校生の一人暮らし許したな。家は自由な人ばっかだったけどさ。」

「あー...両親は、その....いいって、言ってくれました。」

...こんなの嘘だ。俺に両親なんて居ない。育ての親はいるけど、とてもじゃないけど親とは呼べない立ち振る舞い。その証拠にまだ体にその跡が残ってる。

岩本くんは何かを察したのか、少し間を空いたあとそっかとだけ言った。

その後の会話は少しだけ気まずくて、2人で洗い物をしてもう時間は9時になろうとしていた。そろそろ帰りますと言って玄関に向かう。