参 ページ4
▼序幕 綾辻探偵事務所／夜／晴れ
「分からない」
目が覚めた時からだった。私の名前は何で、何故此処に居て、今迄どんな生活をしていたのかもさえも分からない。
分かる事は二つ。私と綾辻と云う名前のこの人とは、ほぼ初対面と云う事。京極と云う名前のおじさんは本来、綾辻にしか見えない筈なのに、私にはおじさんが見えると云う事。
「分からない？ならあの裏路地で倒れていた迄の経緯も分からないと云うのか？」
「裏路地？……うっ！」
綾辻と云う男の云った経緯を、私は思い出そうとする。だが記憶は蘇らない。思い出そうとすると、ズキッと頭痛が頭を襲う。
記憶を探るなと、誰かが云う様な。私の頭の中は、私の記憶は閉ざされていた。
「無理をするな。思い出せないならば仕方ない」
「…そうする」
私は綾辻の云う通り、無理をしない事にした。
「さて…そうなると仮にも名前が必要となるな」
「そうじゃのう…此の様な人形染みた可愛らしい容姿じゃ、名も相応なものにせんとな」
「……」
私は二人と睨めっこするかの様に互いを見つめ合い、そして沈黙が流れた。
自分の容姿と云うものに考えた事は殆ど無いが、唯だ身の周りでは見る事のない、変わった姿と云う事を思うくらいだ。
銀色の髪、色素の異なる両目。
「まどか…なんてどうだ」
その声は何処か柔らかく、私には聞こえた。
「ほぉ、綾辻君が真逆そんな可愛らしい名前を口にするとはの」
「まど、か…」
名付けられた名前を、私は復唱する。まどか、まどか…まどか。
その名前の意味は分からなかったが、何処か愛情のこもった、可愛らしく、すんなりと気に入れる名前であった。
「…綾辻」
「なんだ」
「私の名前は？」
綾辻に自分の名を問うってみる。私の表情は、少し柔らかくなっている様な気がした。
「…まどか」
「おじさん」
「なんじゃ」
「私の名前は？」
此の様なやり取りを、数回やり、私は満足した。
名付けられると云うのは、嬉しいものなんだな。
「私の名前は…まどか。貴方は？」
「俺は綾辻行人、探偵だ」
「儂は京極夏彦じゃ、宜しくのぉ、まどか」
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紫 - 綾辻さんカッコイイですね〜//応援してます！頑張ってください！！ (2016年7月18日 19時) (
レス) id: 3e8226a6a8 (このIDを非表示/違反報告)
千夜 - 綾辻さん大好きです！頑張ってください(^^*) (2016年7月9日 20時) (レス) id: 65a1a1af30 (このIDを非表示/違反報告)
スルメイカ - 綾辻さん格好いいですよね！私も大好きです!！！！更新頑張って下さい! (2016年6月28日 22時) (レス) id: a144d6d49e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月影少女 | 作成日時：2016年6月18日 11時
