Lots of love 【 WT 】 (ページ10)

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傘 kr ページ10

kr side

天気予報は当たっていて生憎(あいにく)の空だった。

空も俺も涙を隠すのには丁度良くて、大きめの傘を閉じる。

暫(しばら)くすると濡れていた左肩に合わせて右肩にも染み出していた。

こんな街中で1人何をやっているのか。

聞こえるのは水を跳ねる車やザーッという空の涙の音だ。

再び傘を差そうかと試(こころ)みるも、ポッカリと空いた右側を見て虚(むな)しくなってまた閉じる。

こんな天気の日は君はいつも頬を膨らませて浮かない顔を見せていた。

そんなAが可愛くて膨らんだ頬をつついて怒らせたっけなぁ。

なんて、残された思い出を辿っていく。

ただ『さよなら』とだけ告げて背を向けた君は大丈夫だったのだろうか。

傘も持たずに濡れながら右側から消えてしまったけれど風邪を引いていないだろうか。

……満面の笑みで『きりやん！』と呼んでいた君はもう他の人の腕の中で眠っているのだろうか。

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『あっ、ねぇきりやん！あの傘買おうよ！』

「はぁ？あれデカいじゃん」

『2人で使えば問題ないよ！ね？』

「も～しょうがないなぁ」

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そう言えばこの傘Aが選んだんだっけな。

こんなの残されたって再び虚(むな)しくなるだけだ。

篠突(しのつ)く雨の中、大きな傘が一つ電柱に立てかけられたのだった。

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