Lots of love 【 WT 】 (ページ9)

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幸 sh ページ9

sh side

夕暮れ時、聞き覚えのある音楽が流れて段々と人の声が遠のいていく。

そんな人混みから少し外れて俺とAは並んで歩いていた。

2人の間には一切言葉は飛び交わず、ただ重い足取りで前に進む。

あれだけ黙る事を知らない君は口を噤(つぐ)んだままでいた。

まぁ、流石に今回は無理もないのだろうか。

突然、公園の方から幸せそうなはしゃぎ声が聞こえる。

その声がした方に顔を向けると手を繋いだ小さい子供とその両親がいて俺は息を飲んだ。

早くこの場から去ろうと少し強くAの腕を掴み早足で歩き出す。

だけど君は立ち止まって

『……あんな未来も待ってたのかな』

なんてぽつりと呟くもんだから

気にすんなよ、なんて気休め程度の言葉を詰まらせる。

その潤んだ瞳は今にも雫を落としそうで、なんて不安定なんだろうと感じる。

そんな泣きそうな顔すんなよ。

かく言う俺の視界も滲(にじ)んでいるけれど。

「良いじゃん、今はこのままで……2人で」

優しく壊れないようにそっと引き寄せる。

すると君は俺の胸に顔を埋めて耐え続けていた瞼(まぶた)を閉じる。

他人の幸せが必ずしも自分の幸せになる訳じゃないからさ

俺達の幸せはこれからゆっくりと築いていこうよ

なんて辿々(たどたど)しく言葉を紡(つむ)ぐとAは顔を上げて俺と目を合わせた。

どうしたんだ、と思っていたらふと頬に暖かい感触が伝わる。

君はポロポロと雫を落としながら優しく笑みを浮かべて一言、『大好きだよ』と告げる。

俺は頬を緩ませて、頬に感じた感触を唇でも確かめる事にした。

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何故こんなに重い雰囲気なのか、何となくで察して頂ければ十分です。

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