reminiscence..【佐野万次郎】 (ページ10)

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次の稽古の日。
私は道場に着くとさっそくエマを探した。

(エマエマエマ…………あ！いたいた…♪)

こないだ会った時よりどこかエマの雰囲気が柔らかくなっているを感じつつ、私は小走りで駆け寄った。
「エマ！」と名前を呼ぶとエマとその隣にいた万次郎が振り向いた。
私は手に持っていた小さなラッピング袋をエマに渡した。

『開けてみて♪』

「………あ！」

『どうかな、こういうのスキ？』

「うん！スキ！！」

私はエマに手作りのヘアゴムをプレゼントした。
エマのイニシャルである"E"が刻印してあるチャームをワンポイントで付けたどの服にも似合うようにシンプルに作ったヘアゴムだ。
エマはそれを嬉しそうに目をキラキラさせて喜んでくれた。
隣で見ていた万次郎が「どうしたのアレ」って聞いてきたからエマに聞こえないように声のボリュームを下げて万次郎にだけ話した。

『こないださ、エマとっても悲しそうにしてたから…なんか元気になれることしたいなぁ〜って思って。それでおばあちゃんと一緒に作ったんだ』

「へぇ」

『…よかった喜んでくれて。私もうれしーや♪』

エマはプレゼントしたヘアゴムで髪を結い直すと「ねぇマイキー見て！どう？！」と言い出した。
私が『マイキー？？』と首を傾げると「そ、俺マイキーになったから」と、どこか自慢げに答えた。
万次郎はいつも唐突でなにを考えているのか分からない子だったけど、きっと万次郎もエマに笑って欲しかったんだよね…？
今となっては万次郎らしいけど。

私はこの日を境にエマとの距離がグッと縮まった。
エマは私を見かける度に「Aちゃん！Aちゃん！」と駆け寄ってきてその姿はまるで遊んで欲しい子犬のようでとても可愛かった。

時間が許す限りたくさん遊んだよね。
一緒にお菓子作りもしたし、休みの日はお泊まりして、万次郎が怖い話をした日にはなかなか寝付けなくって夜中に2人でくっついてトイレに行ったことがあった。
それでも怖い時は万次郎を叩き起こして3人で行くこともあったよね。

毎日誰かしら私のそばにいて、遊んで、笑って…そんな日々がもう当たり前になってたよ。