reminiscence..【佐野万次郎】 (ページ6)

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一目散に走り出した私はさっきからずっと気になっていた掛け声がする方へと足を運んでいた。
「「エイ！エイ！」」と一定のリズムで聞こえる掛け声。
近くまで来ると私は物陰に身を潜めそっと覗いて見ようとしていた。

すると背後から突然「オマエ誰？」と声をかけられた。
私は肩が飛び跳ねるほどすごく驚いて「ひぇっ！！？」と変な声が出たし慌てて振り向いたからきっと凄い顔をしていたんだろうなぁ…案の定その子に「すげー顔」と言われてしまった。
突然のことに私は言葉を詰まらせつつも「こ、こんにちは」と返した。

「…で、だれ？」

『A、AA…です』

「A…？あーお前が櫂くんの妹？」

『うん』

私がそう答えるとその子は「ふ〜ん」となんとも言えない反応をした。
なんだか独特な雰囲気の子だなぁ…って思った。
『あなたの名前は？』と聞くと「万次郎」とだけ返ってきた。

『真兄の弟だよね？よろしくね、まん「なぁ、お前親死んだの？」』

「へ…？」
(え！！？今この子なんて言った！？！？！)

突然の一言に私はフリーズしてしまった。
人の話を最後まで聞かないその上「親死んだの？」って直球すぎる一言！！
もう…なんか凄い一周回って凄い子だ…
今では笑い話しだけどね、当時の私は本当に驚いて空いた口が塞がらなかった。

そのあと戸惑いながらも『そうだよ』って答えると「そっか」ってだけだし、私は不思議そうに万次郎を見ていると万次郎は両手を頭を後ろで組んで私を横切った。
そして振り向くや否や「よろしくな、A」って真兄みたくニカッと笑ってた。

立ち去る訳でもなく、かといって会話をする気配も無さそうだから『あれに参加しなくていいの？』と私はそう言いながら道場の方を指さした。

「うん、いいの」

『…』

私が稽古に励む子達を眺めていると万次郎から視線を感じた。

『？』

「興味あんの？」

『興味というか…強くなりたくて』

「なんで」

『大事な人を守れる力が欲しくって…』

「…」

『だから…やってみたい…かも…』そう呟いた途端、万次郎が「じーーちゃーーーん！！！」といきなり叫びだすもんだから驚いてまた肩が飛び跳ねた。
呆気にとられポカーンとしている私の元に"じいちゃん"と呼ばれた人が来た。

「どうした万次郎」

「じいちゃん、こいつも参加させてやってよ」

万次郎はそう言うと「コイツA。櫂くんの妹」と紹介され「櫂のとこのか。いいぞ」とすんなり話しが進んでしまった。