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電話を切ってから30分も経たないうちに家のチャイムが鳴ると、櫂が「開いてるぞー」と玄関に向かって声をあげた。
次第に足音が近づいてきてリビングの扉が開くと真兄は「A…ごめんな、痛かったろ」と悲しそうに言った。
櫂は黙ってその場の様子を見て、万次郎はというと、私に近寄ることも無く少し離れたところで私を眺めていた。
その表情は暗く、落ち込んでいるように見えた。
「万次郎、来い」
厳しい口調で真兄がそう言うと目を伏せながらやっと近くに寄って来た。
そこで今まで黙っていた櫂が「真、」と言い顎を動かし合図するとその場から去り、真兄もその合図の意図を察して万次郎の肩に軽く手を置くとリビングから去っていった。
万次郎と2人きりになりしばらく無言が続く中、先に口を開いたのは万次郎の方だった。
「…………A、ごめんな…」
弱々しい声でそう言った。
巷では"無敵"と噂されている万次郎だけど、今私の目に前にいるこの子はまるで別人の様だった。
「……シンイチローにも言われたけど、オレ、オマエに甘えすぎてた」
『…………』
「…オレのこと、許さなくていいから…、なんなら気が済むまで殴ってくれ」
『……しないよ、…そんなこと、する訳ないじゃん』
「…………」
『……次郎、』
「?」
『…私今日ね、1人で帰ったの。…ほら、いつもは次郎や圭介と一緒だからさ…なんか…寂しく思っちゃったんだ』
「…………」
『私やっぱり次郎とは仲良くしてたいよ…』
「………うん、オレも…」
『……じゃあ…その……仲直り、しよ…?』
そう言うと万次郎は少し驚いた表情で「いいの?」と不安げに聞いてきたからその不安を振り払うように私は「うん」と笑いかけた。
そして「ごめんな」と『ごめんね』を交互に言うとやっと顔を見合わせて微笑み合った。
『!!、ッたた…』
だけど時間の経過と共に腫れと痛みが増した頬は少し動かしただけでも激痛だったわけで、反射的に「痛い」と口走ってしまい、それを聞いた万次郎はすぐに慌てた様子で冷凍庫から保冷剤を持って来るなり私の頬に当ててくれた。
『うーッ!冷たっ!』
「…ごめん、まじで。…オレが持ってるから楽にしてていいぞ」
『ありがと。…なんかさ、』
「ん?」
『こんなに次郎が優しくしてくれるならたまにケガするのも悪くないかも』
「は?マジで言ってる?…頭も冷やした方がいいか…?」
『うわ、それどーゆー意味?』
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@炭酸(プロフ) - ササミさん» ありがとうございます!! (2021年7月13日 2時) (レス) id: cb8d42f0e4 (このIDを非表示/違反報告)
ササミ - 好きです!!! (2021年7月11日 20時) (レス) id: e6ad737842 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:@炭酸 | 作成日時:2021年6月15日 14時