reminiscence..【佐野万次郎】 (ページ21)

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episode.6 ページ21

瞬く間に一年、また一年と時が過ぎ、私達は小学5年生となった。

エマももう小学4年生。
周りの影響あってか同級生の子達より大人びた雰囲気を纏ってるけど、それでも私の前では「Aちゃん！Aちゃん！」と、あの頃の可愛いエマのままだ。

そして、真兄と櫂の2人は自分達が創ったチームを次の世代に託して引退。
真兄はバイク屋さんを営み、櫂も自分の会社を立ち上げるべく色々と忙しそうにしてた。

正直な話し、2人が引退して想像以上にホッとしていた自分がいたんだ。
やりたい事とはいえ、傷を負って帰ってくる日もあれば重傷を負って入院することもあった。
だからこうして無事に引退出来たことは私にとって奇跡のように思えた。
そしてもう、不安に思うことなく平穏に暮らせるって心の底から安心していた自分がいた。

なのに、私は噂で聞いたーーー・・

万次郎がとある暴走族を1人で潰したという話しを…
その真相を確かめるべく、学校の帰り道に万次郎に聞いてみた。

「ねぇ次郎…あの話しホントなの？」

万次郎はこの話題にさほど興味がないのか「うん」と言うだけで、ポケットから棒付きの飴を取り出すとそれを口に入れコロコロと舐め始めた。

「…そっか」

「ハッ、なんだよ(笑)」

「べつに…？」

「ヘンな奴(笑)」って言われたけど私は無反応だった。
きっと私が心配したところで返ってる言葉が分かるから…
なんなら私がこうやって聞いたことすら万次郎のことだから察しているんだろうなぁって思った。

いつだったか「中学に入ったら最強のチームを創る」そう教えてくれたあの時、万次郎もそっちの世界に行っちゃうんだ…と思った。
だから噂を聞いたときは心配とか不安はもちろんあったけどそれ以上になんか…、なんか1人置いていかれた…ような気がしたんだ。